エネコミ

2017年10月配信

2017年 10月17日
石炭火力の設備利用率、新増設完了で63%/エネ庁試算

 経済産業省・資源エネルギー庁は、2030年度の電源構成(エネルギーミックス)達成時の石炭火力の設備利用率に関する試算結果をまとめた。現行の石炭火力の新増設計画(1688万キロワット)が全て完了した場合には63%、半分が完了した場合には74%となった。エネ庁では経済性などを総合的に勘案した上で、「新増設・休廃止を事業者が経営戦略の中で判断していくことが必要になる」と指摘している。
 10日開いた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の「火力発電に係る判断基準ワーキンググループ」で公表した。政府はエネルギーミックスの中で、石炭を26%、LNG(液化天然ガス)を27%、石油を3%とし、15年度に比べていずれも割合を低減しつつ、高効率化を進める方針を掲げている。
 試算では、エネルギーミックスの達成を前提として、10月時点の各種データを基に、新増設計画の設備容量を1688万キロワットと設定。経年火力が50年以降全て廃止すると仮定し、(1)新増設計画の全量が導入された場合(2)半量(844万キロワット)が導入された場合――の2ケースで実施した結果、全量のケースでは設備利用率は63%程度、半量では74%程度になった。
 また、石炭火力とLNG火力の設備利用率と発電コストの相関関係も検証。設備利用率60%未満では石炭火力の発電単価が高く、60%以上になるとLNG火力が高くなる傾向を示した。LNG火力に比べて石炭火力の方が固定費や運転維持費が約2倍にかさみ、利用率が低い分、費用対効果を下げるためとしている。
 一方、30年度における燃種別の高経年化設備容量の比較では、石炭の約2割、ガスの約3割、石油の約9割が運転開始後の経過年数が40年に達する。エネ庁では高効率の火力発電設備を新増設する一方、小規模を含めた低効率設備の休廃止・稼働抑制の双方を促すことで新陳代謝を図り、火力全体の高効率化を進めていくべきと指摘する。

(電気新聞2017年10月17日付1面)