エネコミ

2017年11月配信

2017年 11月14日
低炭素化には原子力の技術革新が重要/エネ情勢懇談会で米英2氏

 経済産業省は13日、2050年の長期的視点からエネルギー・環境政策や産業の在り方を探る「エネルギー情勢懇談会」の第3回会合を開いた。地球温暖化をテーマに、米英の有識者2氏が自国の温室効果ガス排出削減の政策目標、ゼロエミッション電源の導入状況などを概観。原子力発電の有用性のほか、イノベーションを加速させることが重要といった声が上がった。 (2面に委員発言要旨)
 会合では、環境政策について研究や政策提言を行う米国エンバイロメンタル・プログレスのマイケル・シェレンバーガー代表と、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の専門家会合で共同議長を務める英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのジム・スキー教授からヒアリングを行った。
 シェレンバーガー氏はフランスやドイツの事例を比較しつつ、太陽光や風力が投資額に見合うほど低炭素化に寄与していないことをデータを交えて説明。太陽光はパネルに多くの材料が必要で、今後廃棄物の問題も浮上してくると指摘した。
 その上で、「再生可能エネルギーやCCS(二酸化炭素回収・貯留)は原子力の代替策にはなり得ない」と主張。東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を生かし、国民理解を醸成しながら、原子力発電を拡大していくことが環境保護や温暖化防止の唯一の方策だと訴えた。
 一方、スキー氏は英国の電力部門では1990年代以降、石炭から天然ガスへのシフトで、2005年を境に脱炭素化が順調に進んでいると説明。再生可能エネも総需要の半分を賄い、特に洋上風力は入札制度導入などで大幅にコストも下がっていると指摘した。
 ただ、政府が掲げる炭素計画を遂行するには現行施策のみでは不十分とし、「イノベーションを加速させることが重要」と強調。既設や計画中の軽水炉に加え、小型モジュール炉の有用性にも触れ、「これらは代替策ではなく、補完的なものと位置付けるべき」などと話した。
 委員からは「太陽光パネルをつくるにしても多量の電力が必要。新技術の開発は今から着手しないと50年の実用化は難しい」(坂根正弘委員)、「産業界として想定できる"長期"の限度は20~30年程度。それ以上をどうカバーするか、政治・経済の変化と合わせて考えるべき」(五神真委員)といった意見が出た。次回会合ではエネルギー関連企業の経営戦略を議題に、経営層から意見を募る。

(電気新聞2017年11月14日付1面)