エネコミ

2017年12月配信

2017年 12月8日
原子力の自主的安全向上へ、業界横断で課題議論/電事連など新組織検討

◆広報機能の充実も

 原子力業界で原子力の安全性向上を巡り、特定テーマの解決を図ったり、規制機関との対話強化を目的とした業界横断的な組織・機能の新設が検討されている。これまで各組織に分散していた知見・人材などのリソースを集結させ、事業者、メーカー、関係機関が足並みをそろえて安全性を高める取り組みを推進する。広報機能の一層の充実も目指す。検討を主導する電気事業連合会は、米国の先進事例を活用しつつ、今後さらに詳細を詰める。
 新たに立ち上げる組織・機能に求められるのが、業界横断的な共通課題の検討だ。規制機関からの要求があった場合、経済性、実現可能性などを踏まえ、業界全体の意見を「技術リポート」として取りまとめる。これを基に規制機関との対話に臨む仕組みだ。リポートは一般にも公開し、透明性を確保するとともに評価を自らの取り組みの改善につなげる。
 検討するテーマを決めたり、リポートの中身を議論するのが、電力会社・重電メーカーの原子力部門の責任者クラスが参画する「ステアリング会議」と、業務執行の責任者が集う「運営会議」で構成される委員会だ。下部組織として実務者レベルのワーキンググループ(WG)も置く。
 一方、電事連では各社の安全性向上の取り組み状況を、原子力安全推進協会(JANSI)がレビューすることも検討している。発電所のパフォーマンスの確認は、既にJANSIがピアレビューの形で実施している。これに加え、本店を含めたリスクマネジメントの構築状況も、各社に聞き取りを行うなど機能を拡充させる。
 組織整備のもう一つの柱が広報機能の強化だ。個別の発電所の安全対策などをステークホルダーに発信することは個社の責任に委ねられているものの、各社の先進事例の共有や関係機関との連携については、これまで不十分な面があった。
 このため、電事連が主導し、新たな会議体「『S』、『3E』委員会」を立ち上げ、日本原子力産業協会、日本原子力学会などの参加も募りながら、具体的に発信すべきテーマなどを決める。
 原子力の関連情報を巡っては、ネット上に一般向けの平易な解説と専門性の高い情報が混在しているのが実情だ。その橋渡しとなるような発信の仕方について、現在、原子力委員会でも議論が進められている。
 電事連原子力部では、こうした新たなスキームを構築する意義について、「規制と対峙(たいじ)するのではなく、これまで分散していた各組織のリソースを集約し、知見を持ち寄ることで、業界全体の安全性を高めるのが狙い」と説明する。同様の機能を有する米国原子力エネルギー協会(NEI)の取り組みも参考にしながら、検討を深めていく考えだ。

(電気新聞2017年12月8日付1面)