経済産業省は8日、2050年の長期的視点からエネルギー政策の在り方を探る「エネルギー情勢懇談会」の第4回会合を開いた。今回はゼロエミッション企業の経営戦略をテーマに、米エクセロンとデンマークのオーステッドの幹部が出席。それぞれ原子力、洋上風力を主力事業として展開するまでの経緯や市場の動向などを解説した。次回会合は来年1月を予定しており、引き続き海外のエネルギー事業者からヒアリングを行う。
同日の会合にはクリス・グールド・エクセロン・コーポレーション企業戦略担当上級副社長、ラルフ・ハンター・エクセロン・ニュークリア最高執行責任者、マティアス・バウゼンバイン・オーステッド本部長らが出席した。
エクセロンは、米国内で15施設・25基の原子炉を保有し、平均94%と高い設備利用率を誇っている。会合では企業買収を繰り返し、業容を拡大してきた経緯を振り返るとともに、競争市場で原子力の価値を反映するためのアプローチとして、カーボンプライシング(炭素の価格付け)や適切な価格設定の必要性を強調した。
その上で、経済性を改善するためのオプションも提示した。具体的には、設計面などでの発電所の標準化や小型モジュール炉(SMR)開発の可能性を指摘。米国内でパイロットプロジェクトが進む80年を見据えた運転期間の延長にも言及した。
一方、オーステッドは今年10月に旧ドン・エナジーから社名を変更。石油・ガス事業を売却し、現在は主に洋上風力・火力事業を手掛けている。23年までに石炭利用からの完全撤退も目指している。同社はプレゼンテーションの中で、日本で洋上風力を拡大するための方策を提起。透明性の高い法制度に加え、市場形成段階の安定した補助制度が長期的なコスト削減には必要と訴えた。
出席した委員からは、エクセロンに対して、東京電力福島第一原子力発電所事故の経営への影響や、事故を踏まえた安全対策の状況などを問う声が上がった。デンマークと異なり、浮体式がメインとなる日本の洋上風力の経済性に関する意見も聞かれた。
次回会合は来年1月に開く予定。イタリアのエネル、フランス電力(EDF)、仏エンジーといった海外で多角的な事業展開を進めている大手総合エネルギー企業を招き、ヒアリングを行う。
(電気新聞2017年12月11日付1面)