エネコミ

2017年12月配信

2017年 12月18日
[社長に聞く]九州電力・瓜生道明氏

◆グループ大で革新生む

 玄海原子力発電所3、4号機の再稼働を来春に控える九州電力。財務体質の改善など経営基盤の強化を進めるとともに、海外電気事業など成長分野への取り組みを加速している。同時に、瓜生道明社長は「イノベーション創出への取り組みがグループ全体に浸透していくことが大切」と、新たな成長に向けた取り組みに意欲を示す。 (聞き手=山田 真)

 ◇月90億円影響
 ――神戸製鋼所の問題で玄海3、4号機の再稼働時期を約2カ月後ろ倒ししたが、現状は。
 「これまでの確認調査では問題は認められておらず、新規制基準で新たに設置した設備についても、神戸製鋼の製品であれば製造工場に当社自ら立ち入り調査を行い、検査プロセスの妥当性の確認を行っている。元データと検査証明書との照合も行っている。今後は原子力規制庁が行う使用前検査の中で説明し、確認してもらうことになる」
 ――玄海3、4号機の再稼働が業績に与える影響は。
 「2基で月90億円程度の火力燃料費が減少すると試算している」
 ――今後の玄海2号機の位置付けをどう考えるか。
 「玄海2号機は2021年3月に運開40年を迎えるため、運転期間延長の認可申請は20年3月までに行う必要がある。現在は火災防護対策や耐震補強対策工事など、技術面や費用面から検討を行っている」

 ◇域外営業強化
 ――九州エリア内での競争環境、域外での電力販売の状況は。
 「低圧のスイッチング(供給者変更)件数は11月末で39万3千件だが、家庭用の離脱は増え続けており、危機感を持っている。価格やサービスに加え、信頼感・安心感を含め総合的な評価でお客さまに選択して頂けるようにと考えている」
 「域外では九電みらいエナジーが約4200件の契約を獲得しており、1月からは高圧以上のお客さまにも営業を始めた。ただ、関東エリアではまだ知名度が低い。対面営業を強化するなど、販売目標の1万件を目指して頑張らなければならない」
 ――家庭用ガス販売事業では初年度目標の4万件を達成したが。
 「11月末時点で約4万7千件となっており、引き続き『顔の見える営業』を行っていきたい。西部ガスの福北エリアではオール電化に加え、電気とガスのセット販売で対抗していきたい」
 ――今後の電気料金値下げに対する考え方は。
 「財務体質の改善状況や経営効率化の進捗などを見極めながら判断したい。まずは自己資本比率の回復が急務だが、将来的には新しい料金メニューをつくって、お客さまに還元していくという方策もあるのではないか」

 ◇IPPが順調
 ――成長分野への取り組みは。
 「海外電気事業では、インドネシアのサルーラ地熱IPP(独立系発電事業者)事業で来春には3号機が完成する見込みだ。今後はアジアを中心にガス火力だけでなく、石炭火力や地熱でも案件掘り起こしを進めていきたい。早期の配当収益が期待できる欧米での発電事業も模索している。再生可能エネルギー事業もグループ一体となって展開しており、今後も幅広いニーズにワンストップで対応していきたい」
 「イノベーション創出にもグループで取り組み始めた。新たな成長の種を見つけるとともに、常にお客さまにとって新しい価値を提供できる仕組みを考えていきたい。ベンチャー企業とビジネスモデルを検討していく過程などは、社員にとって良い勉強になると思う」
 ――今後、何を強みに、どのような企業を目指していくか。
 「九州地域とのつながりはもちろん、安い料金水準、原子力再稼働と石炭火力の新設、海外電気事業や地熱発電、再生可能エネの経験や技術があることが強みだ。今後は多角的な事業展開を視野に、イノベーション創出への取り組みがグループ全体に浸透していくことが大切だと考えている」

(電気新聞2017年12月18日付1面)