エネルギー基本計画の見直し作業が終盤に差し掛かっている。今後の取りまとめに向けては、電力・ガス産業のグローバル展開の在り方を盛り込むかも注目される。今後、国内需要の鈍化が予想される中、いかに海外で活路を見いだすかは事業者が成長戦略を描く上での重要な要素の一つ。日本が強みを持つ高効率火力や再生可能エネルギー、送配電分野のほか、O&M(保守・運転)も含めた“パッケージ戦略”が求められる。海外ニーズと国内企業の戦略をいかに合致させるかも焦点になりそうだ。
経済産業省は、2050年の長期的な視点からエネルギー産業の将来像を探る「エネルギー情勢懇談会」で、仏エンジーなど総合エネルギー企業からヒアリングを実施。再生可能エネへのシフト、ポートフォリオ拡大の経緯などを整理した。
一方、昨年3月に立ち上げた非公開の「電力・ガス分野から考えるグローバルエネルギーサービス研究会」でも並行して議論を展開。日本の海外戦略とそれに伴う国内基盤の在り方について、大手電力・ガス会社やメーカーなどとともに検討を深めてきた。
同研究会では、4月中下旬にも開く次回会合で議論に区切りを付けた後、5月をめどに報告書を公表する予定だ。エネルギー基本計画やインフラシステム輸出戦略に、国内のユーティリティー企業をどう位置付けるかを明確化し、ファイナンス支援の仕組み、人工知能(AI)を活用した付加価値の創出などを明記する。新たな市場開拓やルール形成に向け国際協力機構(JICA)の活用なども盛り込みたい考え。
電力・ガス会社の海外IPP(独立系発電事業者)事業を巡っては、案件が最も多いアジア・豪州では、石炭火力が5割以上(容量ベース)を占める。北米・中南米、中東ではガス火力が大半で、欧州では再生可能エネ案件が4割に上る。
近年では、北米でのマーチャント案件が増加傾向にあり、長期的な収入が望めるPPA(電力販売契約)が切れた後のファイナンスをどう手当てするかが課題。カントリーリスクへの支援も国内企業から強い要請がある。
また、東南アジアなど途上国では、脱炭素化の流れを踏まえ、再生可能エネの導入拡大がニーズになると同時に、安定供給を両立させたい思惑もある。これには、O&MにIoT(モノのインターネット)を組み合わせるなど、総合的な提案が必要だ。
経産省ではエネルギー基本計画にも、こうした海外戦略の視点を盛り込む方向で調整を進めている。「単品で売っていくのが得策とは限らない。付加価値を付け、パッケージで展開していく方向性をメッセージとして打ち出したい」(経産省)としている。
(電気新聞2018年3月20日付1面)