エネコミ

2015年12月配信

2015年 9月11日
川内1号機営業運転入り 安全性向上への取り組み、これからが本番

◆規制・事業者ともに課題

 九州電力川内原子力発電所1号機の使用前検査と定期検査が10日終了し、営業運転に移行した。新規制基準に基づく一連の許認可審査・検査が完了した初のケースとなった。先行事例ができたことで、原子力規制委員会による審査・検査は従来より加速するとみられるが、体制強化は課題だ。一方、九州電力は川内1号機を13カ月間運転させた後、自主的対策を含めた安全性評価を実施し、規制委への届け出が求められている。東京電力福島第一原子力発電所事故後に講じてきた安全性向上策の実力を問い続けなければならない。
 川内1、2号機が新基準に適合するとした「審査書」が固まり、原子炉設置変更許可が交付されたのは14年9月。その後の工事計画認可を巡る審査は長引き、1号機が使用前検査に入ったのは合格から半年後の今年3月末だ。
 対象機器が膨大だったこともあり、使用前検査終了までに約5カ月半を費やした。
 川内1号機の稼働に必要な審査・検査を一通り終えたことで、規制庁は後続プラントの手続きに費やす時間を短縮できるとみるが、人員拡充は大きな課題として残る。
 使用前検査に当たる原子力規制庁本庁の職員は、福島第一の対応要員も含めて現在約35人。川内1、2号機に加え、8月半ばからは関西電力高浜発電所3号機にも人員を割かなければならなかった。この3プラントだけならば「検査官のやりくりに支障が出ることはなかった」(規制庁)。だが今後、審査に合格して使用前検査の段階に移るプラントが同じ時期に重なってくると「人員の手配をあらためて考えなければならない」(同)という。
 一方、福島第一事故後、「規制の枠組みにとどまらず安全性を追求する」との姿勢を示してきた事業者は、稼働後の次の定検を迎えたら、自主的対策の効果を定量的に把握する必要がある。
 川内1号機も含め、今後稼働するプラントは営業運転終了後、原子炉等規制法に基づき「安全性向上評価」(FSAR)という"自己診断"を行った上で規制委に届け出なければならない。
 原子炉設置変更許可に関する審査では、規制で要求する重大事故対策の有効性評価が議論されたが、それに加えて自主的な安全対策も含めた評価を実施し、炉心損傷確率がどの程度下がっているかなどを分析するものだ。
 FSARは、規制委が「原子力発電所を監視する上で背骨となる制度に育ってほしい」(更田豊志委員)と期待する仕組み。規制庁幹部も「(規制要求と自主的対策の相乗効果により)安全水準のスパイラルアップになる」と表現する。
 安全性の底上げに向けた規制・事業者双方の取り組みは、これからが本番だ。

(電気新聞2015年9月11日付2面)