エネコミ

2016年3月配信

2016年 3月1日
九電みらいエナジー、低圧電力小売りで首都圏進出 九州らしさで出身者に照準

 ◇実家見守りなど付帯サービスに力
 東京電力エリアでの低圧電気料金メニューを発表した九州電力グループの九電みらいエナジー(福岡市、穐山泰治社長)。価格面でのメリットはもちろんのこと、九州の実家で暮らす親の見守りなど、地方ならではの付帯サービスをPRしていく。一方、首都圏での電気事業を確固としたものにするためにも、50ヘルツ電源の確保が重要になってくる。(近藤 圭一)
 これまで新電力(特定規模電気事業者)からの攻勢を受けて立つ側だった九州電力が、初めて挑戦する首都圏での電力小売り。その事業を担う九電みらいエナジーが、攻め入る側になって考慮したのが「九州らしさ」だ。九州とは比べ物にならない巨大市場が広がる中、理想は全方位営業による顧客獲得だが、営業基盤に乏しい首都圏でまず足がかりとするのは、九州にゆかりのある顧客だ。九電みらいエナジーによると、関東在住の九州出身者は150万~160万人いるという。穐山社長も「九州・九電らしさを訴求していきたい」と話す。
 まずは、九州から関東に進出している企業に対して、その従業員にスイッチング(事業者切り替え)してもらえるよう、戸別訪問による営業活動を始めた。今回の料金メニュー発表に先立って、2月1日には九州電力営業本部から7人の精鋭要員を受け入れ、九電みらいエナジー営業本部を立ち上げた。同社はもともと再生可能エネルギー開発会社として発足したため、電力販売の専門家はいなかった。当面、関東に拠点は置かない方針で、同社の営業部隊が出張ベースで営業活動を行うという。
 付帯サービスについても、九州らしさを打ち出していく。目玉はスマートメーター(次世代電力量計)で得られる情報を活用し、顧客の親など九州在住家族を見守るサービス。家族が九州電力の顧客であることを条件とし、普段の電気の使い方に変化が生じた際、メールで知らせてくれるほかオプションで駆け付けるサービスも用意した。
 日本航空(JAL)のマイルとの提携に関しても、九州帰省の際の航空機利用などに着目して生まれた。来年度上期中をめどに、電気の使用に応じJALマイルがたまる料金プランを公表する方針。
 今後はこれら以外に第2弾、第3弾と特色あるキャンペーン、新サービスの発表が待たれる。

 ◇"50ヘルツ電源"の確保急ぐ
 一方、長期にわたる事業の安定性や信頼性に関わってくる電源については、当面は日本卸電力取引所(JEPX)からの調達のみを想定しており、まさに「トレーディングの世界」(関係者)となる。制約が多いことから、連系線を介した九州から関東への送電も当面は行わない方針。発電した電気をどう扱うかはまだ検討段階だが、九州電力、出光興産、東京ガスの3社で千葉県に建設する石炭火力発電所も2025年度頃の運転開始となっている。
 穐山社長は電源の確保について「他の発電事業者から相対で電力を調達することも検討したい」と話す。競争力を高め、成長していくことはもちろんのこと、公益企業として関東で新たな「九電ブランド」を築くためにも、電源は欠かせない要素となる。

(電気新聞2016年3月1日付3面)