経済産業省・資源エネルギー庁、原子力発電環境整備機構(NUMO、近藤駿介理事長)主催の全国シンポジウム「いま改めて考えよう地層処分―科学的有望地の提示に向けて」が9日、都内で始まった。高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する理解活動の一環。国が今年中の選定を目指す科学的有望地の位置付けや、国民との対話の在り方などを巡って有識者らが意見を交わした。シンポジウムは今後、6月にかけて全国で開かれる。
高レベル放射性廃棄物の最終処分を巡っては昨年5月、約7年ぶりに基本方針を改定。科学的有望地の選定など国が前面に立って取り組むことを決めた。今年中に適地が選ばれる予定だ。こうした状況を踏まえ、シンポジウムでは国の審議会での検討状況などを示し、国民的な理解醸成につなげるのが狙い。
あいさつに立った高木陽介経産副大臣は、「有望地の選定は長い道のりの第一歩だ。地層処分は決して解決不可能なものではない。社会全体の理解を得ながら、全力で取り組みたい」と訴えた。
引き続き行われたパネル討論では、近藤理事長をはじめ、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)放射性廃棄物ワーキンググループ(WG)の増田寛也委員長、同地層処分技術WGの杤山修委員長(原子力安全研究協会技術顧問)、多田明弘・エネ庁電力・ガス事業部長らが登壇した。
増田氏は「フィンランドやスウェーデンなど早くからこの難問に取り組んできた海外の知見に学ぶことが大切」と指摘。廃棄物の回収可能性や可逆性を担保する仕組みが重要と述べる一方、国・実施主体と地域との信頼構築を課題に挙げた。
多田部長は科学的有望地の選定プロセスに言及し、「提示することと調査の受け入れを求めることは別次元の話だ」と強調。「すぐに判断を仰ぐようなことは考えていない」と述べた。近藤理事長は対話活動の在り方について「安全最優先に様々な意見に耳を傾け、全国的な取り組みを続けたい」と語った。
同日は約300人が聴講し、登壇者との質疑応答の時間も設けられた。シンポジウムは6月初旬にかけて全国8カ所で開催される。
(電気新聞2016年5月10日付1面)