エネコミ

2016年5月配信

2016年 5月16日
政府、夏季節電要請を震災後初の見送り/融通なしで最低予備率確保

 政府は13日、「電力需給に関する検討会合」(座長=菅義偉官房長官)を開き、2016年度夏季の電力需給対策を決めた。節電の定着や離脱の増加などにより、需給状況が一定程度改善したため、今夏は電力会社間の融通なしで、全社で安定供給に最低限必要な予備率3%以上を確保できる見通し。政府は東日本大震災以降、国民に対して夏季と冬季に節電を要請してきたが、需給状況の改善を受けて今夏は要請を行わない。
 対策では需給逼迫への備えとして、発電所などの計画外停止のリスクを最小限にするため、電力会社に対し、発電設備の保守・保全の強化を要請。また、デマンドレスポンス(DR)など、需要面の取り組みを促進することも求める。
 電力広域的運営推進機関(広域機関)には、ある電力会社で需給状況を改善する必要性が生じた場合、他の電力に対して速やかに融通の指示を行うといった臨機応変の対応を要望する。
 さらに、産業界や消費者と一体となった省エネルギーキャンペーンを実施。30年度に向け、徹底した省エネの取り組みを推進する。
 一方、需給状況や予想される需要に関する情報発信を行うとともに、インターネット事業者など民間事業者への情報提供も積極的に進める。これらの対策を行った上で、予備率3%を下回ることが予想される場合には、「需給逼迫警報」を発令し、節電の協力を要請する。
 8月の需給見通しでは、沖縄を除く9電力の予備率を9.1%と算定した。東日本3社は8.7%、中西日本6社は9.4%。四国電力伊方発電所3号機が再稼働すると、予備率は9電力計で9.5%、中西日本は10.2%に向上。四国電力は、5.8%から18.1%へ大幅に上昇する。
 経済産業省は、供給力の9割近くを火力発電に依存している状況は変わらないため、「大規模な電源脱落や、想定外の気温上昇によって需要が増加し、供給力不足に陥るリスクがあることに十分注意する必要がある」と説明している。

(電気新聞2016年5月16日付2面)