エネコミ

2016年5月配信

2016年 5月19日
太陽光、九州電力の離島系統を圧迫/再エネ出力抑制指示、機会が急増

◆内燃力の出力下限で運用、設備ダメージ懸念

 九州電力が離島における安定供給を維持するため、再生可能エネルギー事業者に対する出力抑制を指示する機会が増えている。種子島で2015年5月5日に初実施して以降、16年2月に1回、3月に5回実施。4月は種子島、壱岐で計7回、5月は7日までに2島で4回実施した。需要規模の小さい離島に、出力変動の大きな太陽光発電設備が多量に導入されていることが原因だけに、抜本的な解決策は見当たらず、九州電力は苦しい系統運用を余儀なくされている。(一場 次夫)

 16年3月末時点で接続済みの太陽光は、種子島1万1152キロワット(接続可能量9千キロワット)、壱岐7788キロワット(同5900キロワット)。種子島は1年前から412キロワット増えただけ。壱岐では3月下旬に約千キロワットの設備が運転開始したことが、出力抑制を始める引き金になった。
 春・秋などの軽負荷期、晴れの日には太陽光の出力が増加。内燃力発電設備の出力をメーカーが保証する運用下限の50%に絞っても、系統に流れる電力が需要を上回り、大規模停電を引き起こす恐れがある。これを回避するため、九州電力は翌日のエリア需要を供給量が上回ると予想した場合、再生可能エネ事業者に対して午前9時から午後4時までの出力抑制を指示する。当日朝に状況が変われば指示を一部解除する場合もある。

 ◇想定精度を向上
 指示が妥当だったかどうかは事後、電力広域的運営推進機関(広域機関)によって検証される。種子島で15年5月から16年3月までに実施した7回の指示は、いずれも「内燃力の下げ代(出力低下余地)不足」が理由であり適切、との判断が示された。最大抑制量は約2500キロワット(3月20日)。
 一方で、広域機関は15年5月の出力抑制を検証した際、(1)需要想定のさらなる精度向上(2)太陽光発電の最大出力想定および出力低下想定の精度向上――の2点を求めていた。
 これを受け、九州電力は16年2月までに、基準需要を「5年前の同時期実績」から「直近実績」に変更。気温補正も取り入れて需要想定の精度を高めた。
 さらに、太陽光の最大出力想定に使う出力換算係数を順次、九州本土のものから島ごとのものに変更する方針を打ち出した。そのためには各島に日射量計を設置し、データを集める必要がある。種子島と壱岐で準備が整い、この4月から新係数を採用している。出力低下の想定についてはデータを蓄積中だ。

 ◇ぎりぎりの局面
 それでも、この4月には種子島で4回、壱岐で3回の出力抑制実施を余儀なくされた。最大抑制量は4月29日、種子島の約4100キロワットだった。
 これまでの出力抑制の状況について、九州電力電力輸送本部の深川文博副部長兼給電計画グループ長は、「3、4月は日射量が多い。昨年(の同時期)もぎりぎりの運用だったが、ルールが決まる前で出力抑制ができなかった」と話す。内燃力の燃料を本来は起動・停止時用のA重油に切り替えてダメージを抑えつつ、出力を50%よりも下げることで急場をしのぐ局面もあったという。
 出力抑制ルールを公表したのは15年4月28日。抑制回数が増えるとみられた同年秋は「たまたま、需要の低い土日の天候が悪かった」(深川副部長)ため、実施ゼロ。16年の春になって実情が表れたといえる。
 出力抑制の回数を少しでも減らそうと、同社は複数の内燃力設備のうち、運用下限(50%)出力の絶対値がより小さくなる設備を最大限活用するという工夫も行う。

 ◇対策コストが壁
 だが、50%であっても低出力で運転すると燃焼状態が悪化して未燃カーボン(すす)が増加、設備にダメージを与える。加えて、離島の内燃力には高経年化設備が多い。種子島は9基中7基、壱岐は8基中4基が運転開始から30年を超えている。故障リスクを増大させる厳しい運用であることは否めない。
 解決策としては、再生可能エネ事業者に蓄電池を設置してもらうことが考えられる。ただ、数時間単位の充放電が可能な大容量蓄電池はコストの高さが壁となる。
 現在の出力抑制はFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の旧ルールに基づく。出力500キロワット以上の太陽光・風力が対象。無償で指示できるのは年間30日などと上限が決まっている。
 九州電力エリアの離島では種子島、壱岐のほか、対馬、徳之島、沖永良部島、与論島で太陽光の受け付け済み量が接続可能量を超過しており、今後、出力抑制を実施する見通し。特に、沖永良部島と与論島は今秋に行う可能性が出ている。

(電気新聞2016年5月19日付1面)