◆事業成長、支える基盤
九州電力は、同社グループのCSR(企業の社会的責任)の取り組み状況をステークホルダーに報告する「九州電力CSR報告書2016」を発行した。「安全・安心の追求」「環境にやさしい企業活動」「誠実で公正な事業運営」「社会との真摯なコミュニケーション」「地域・社会との共生」「人権尊重・働きがいのある職場づくり」の6つに、今回新設した「お客さま満足の創造」を加えた7つを重点項目として、2015年度の主な取り組みを掲載している。CSRの取り組みについて、瓜生道明社長のコミットメントと併せて紹介する。
◆熊本地震など復旧へ全力/顧客ニーズや課題に応え
【お客さま満足の創造】
九州電力は、電力を絶やさず安定的に供給するため、災害時の迅速な停電復旧に努めており、2015年5月の鹿児島県口永良部島新岳の噴火、8月の台風15号、今年1月の豪雪、4月の「平成28年熊本地震」における対応を行った。今後も、台風などの災害に備え、自治体や自衛隊と連携した大規模非常災害訓練を行っていく。
また、顧客の様々なライフスタイルに合った新料金プランや、顧客の毎日の暮らしに安心を届ける新サービスなどを展開し、引き続き、顧客のニーズや課題に応えていく。
◆公衆感電事故防止をPR/豊前蓄電池変電所が運開
【安全・安心の追求】
同社は、原子力発電所の安全確保において、重大事故を起こさないための対策や、万が一の重大事故に対処するための対策の強化を図るとともに、安全性・信頼性向上の取り組みを自主的・継続的に行っている。16年3月には、川内原子力発電所において、耐震構造の緊急時対策棟を新たに設置する計画を国に申請した。
また、顧客の安全確保においては、関係各所に公衆感電事故防止のPR活動や協力依頼を行うほか、電力設備への接触による公衆感電事故を防止するための設備対策を実施している。
【環境にやさしい企業活動】
同社は、地球環境の保全に向けて、安全確保を大前提とした原子力発電の活用や、火力発電所の熱効率の維持・向上、再生可能エネルギーの開発・導入などに取り組んでいる。15年度は、川内原子力発電所の再稼働で約500万トンの二酸化炭素(CO2)排出抑制につながったと試算している。
また、再生可能エネルギーの受け入れ拡大策の一つとして、世界最大級の大容量蓄電システムを備えた豊前蓄電池変電所の運用を開始した。同社は、30年までに、地熱や水力を中心に、洋上風力も含め、国内外で新たに250万キロワットの再生可能エネ電源を開発することを目標にグループ一体で取り組んでいく。
【誠実で公正な事業運営】
同社は、取締役会の下に社長を委員長とするコンプライアンス委員会を設置し、社外有識者から客観的・専門的な立場からの助言を受けている。15年度は、支社長を「エリアコンプライアンス推進者」と定めるなど、支社エリアの組織一体となった取り組みを推進する体制の強化を図った。
また、従業員のコンプライアンス(法令順守)意識向上のため各種研修を行っており、15年度のコンプライアンス推進月間では、「電力自由化の下での『公正で自由な競争』」と題し、電力小売りの全面自由化後に問題となりうる営業手法などについての講演会を行った。
【社会との真摯なコミュニケーション】
同社は、顧客からの意見・要望を聴くとともに、同社の事業活動を伝えるため、対話活動や出前授業など様々な機会を捉えて対話を行っており、15年度は約18万人の顧客と対話を行った。
活動をより一層推進するため、コミュニケーションスキル強化を狙いとした研修や、事業所独自の説明資料の作成、対話推進チームの結成など、積極的な取り組みを行っている。
また、同社ホームページやテレビCM、フェイスブックなど様々な媒体を活用して、同社の事業活動について積極的に発信している。
◆「九電みらい財団」を設立/次世代の育成支援に助成
【地域・社会との共生】
同社は、16年5月に「九電みらい財団」を設立した。同財団では、大分県坊ガツル湿原での環境保全活動や、同社の水源かん養林を活用した環境教育活動を充実させるとともに、地域の諸団体が実施する次世代育成支援活動に対して助成を行っていく。
また、NPOや地域住民との協働によるボランティア活動「こらぼらQでん」では、15年度に九州各地で20団体と計28回の環境保全活動などを行った。
このほか、産官学連携の地域プロジェクトへの協力をはじめ、高齢者や子どもたちの地域見守り活動への協力など、地域に根ざした様々な活動に取り組んでいる。
【人権尊重・働きがいのある職場づくり】
同社は、女性の活躍推進に向けた取り組みとして、16年3月に「女性活躍推進に関する行動計画」を策定し、意識・組織風土改革、キャリア形成支援、仕事と家庭の両立支援を柱に女性活躍を推進しており、14~18年度までの女性管理職の新規登用数を、09~13年度の2倍にすることを目指している。
また、高年齢者の雇用環境を充実するため、15年度から「キャリア社員制度」を導入したほか、障がい者の雇用促進にも努めている。
◆顧客や社会の期待、取り組みに反映
同社は、顧客や社会の期待・要請をCSRの取り組みに反映するマネジメント体制を構築している。
同社地域共生本部において、CSRの取り組みに対するお客さまアンケート調査を実施したりお客さまモニターから意見を聴取したりするとともに、専門家からも助言を得ている。これらの社外からの意見を各部門と共有した上で、今後の取り組みの方向性を経営層が出席する会議の場で審議し、取り組みの改善・充実を図っている。
◆トップコミットメント/社長 瓜生道明氏
◇CSR経営の意識徹底、強固な信頼関係構築へ
当社グループは、「ずっと先まで、明るくしたい。」をブランド・メッセージとする「九州電力の思い」の下、安定した電力・エネルギーをしっかりとお届けすることを使命に事業活動を行っています。
2015年4月には、「九州電力グループ中期経営方針」を策定し、その中で、2030年のありたい姿を「日本一のエネルギーサービスを提供する企業グループ」としました。変化や競争をチャンスと捉え、九州域内・域外のエネルギー事業、海外事業、再生可能エネルギー事業などを積極的に行い、さらなる成長を目指しています。これらの事業活動を支える基盤として、CSR経営の徹底を中期経営方針の重点的な取り組みに掲げています。
当社グループは、社会の持続的発展のため、事業活動において社会に与える影響に配慮するだけでなく、皆さまのご期待・ご要請に応え、地域・社会の課題解決に貢献するCSRの取り組みを推進しています。
2016年6月には、「九州電力グループ行動憲章」について、CSRへの取り組み姿勢をより明確にし、「九州電力グループCSR憲章」として見直しました。
今後、本憲章に基づき、グループ全体でCSR経営の徹底に向けた意識浸透をより一層進めていきます。
また、2016年4月から開始された電力小売りの全面自由化等の経営環境の変化や、企業に対してお客さまの課題解決につながる取り組みが求められていることを踏まえ、CSRの重点項目として、「お客さま満足の創造」を新たに掲げ、取り組みを充実させていきます。
当社グループは、以下の7つをCSRの重点項目として位置付け、取り組みを積極的に行い、皆さまとの信頼関係を強固にしていきます。
(1)お客さま満足の創造
お客さまのニーズや課題にお応えする価値ある商品・サービスを提供します。
(2)安全・安心の追求
設備の安全対策や作業者の安全確保を徹底し、安全・安心を最優先した事業活動を行います。
(3)環境にやさしい企業活動
地球環境の保全や地域環境との共生に向けた取り組みを推進します。
(4)誠実で公正な事業運営
従業員一人一人が高いコンプライアンス意識をもち、誠実で公正な事業運営を行います。
(5)社会との真摯なコミュニケーション
情報を迅速に公開するとともに、皆さまとのコミュニケーション活動を積極的に推進します。
(6)地域・社会との共生
環境活動や次世代育成支援活動、地域に根ざした活動を通して、地域・社会の課題解決に貢献します。
(7)人権尊重・働きがいのある職場づくり
人権を尊重し、多様な人材が最大限の能力を発揮できる職場環境をつくります。
(電気新聞2016年7月21日付9面)