使用済み燃料再処理事業の新たな実施主体となる「使用済燃料再処理機構(再処理機構)」が3日発足し、青森市内の本部で業務を開始した。開所式であいさつした元東北電力副社長の井上茂理事長は「着実に核燃料サイクルを進めるための大きな一歩だ」と強調した。青森県庁では三村申吾知事と会談。三村知事は「国策として進められてきたサイクル事業の新たな推進力になる。不退転の決意で取り組んでほしい」と要望した。
1日に設立根拠法となる「再処理等拠出金法」が施行されたのを受けて3日、青森市内のビルに設けた本部事務所で業務を開始した。事務局は総務部、事業管理部、事業計画部の3部体制で、職員は電力会社からの出向者を中心とした約30人。今後、青森県六ケ所村にも連絡事務所を置き、所長1人を常駐させる予定という。
事務所内で開かれた看板除幕式・開所式には来賓として井原巧経済産業大臣政務官、電気事業連合会の廣江譲副会長らが出席した。あいさつに立った井上理事長は「事業を進めるに当たっては何よりも立地自治体の理解と協力が不可欠だ」と指摘。「地域と日本原燃の信頼関係が維持されるよう最大限努めたい」と強調した。
井原政務官は「社会的な要請、自治体からの期待に応えるべく、事業者とも連携し、知見を活用しながら一丸となって業務を進めてほしい」と呼び掛けた。
5月の通常国会で成立した再処理等拠出金法では必要な資金の流れが変わる。これまでの積立金方式を廃止し、原子力事業者が使用済み燃料発生時に支払う拠出金方式に改め、再処理事業が円滑に進むようにする。
再処理機構は拠出金額を決定し、事業者から資金を集める。組織内には外部有識者で構成される運営委員会を設け、拠出金額や再処理事業全体を見据えた実施計画の策定などについて意思決定を行う仕組みだ。
再処理、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料加工工場の建設や運転・保守はこれまでと同様、原子炉等規制法に定める再処理事業者である原燃が担う。再処理機構は原燃との間で委託契約を結ぶ。
井上理事長は3日夕に県庁を訪れ、三村知事と会談。再処理機構の発足を報告した。三村知事は「これまでの県民の理解・協力を考慮し、事業の安全や地域振興にも万全を期し、不退転の決意で取り組んで頂きたい」と求めた。
(電気新聞2016年10月4日付1面)