エネコミ

2016年11月配信

2016年 10月20日
PWR4社技術協力/"民営主導"の姿勢示す

 原子力事業を巡る相互協力協定では、今年4月に関西、中国、四国、九州の電力各社が締結し、8月に北陸電力が加わった5社の枠組みがある。こちらは原子力災害時の要員・資機材支援をメーンに、廃止措置、特定重大事故等対処施設(特重施設)対応なども対象。
 災害時の相互支援は日本原子力発電やJパワー(電源開発)、日本原燃を含む原子力12社提携(2014年締結)の枠組みを地理的に近接する会社間で深化させたもので、今年9月には東京電力ホールディングス(HD)と東北電力も協力の拡充を打ち出している。
 今回はこれらとは異なり、PWRを採用する4社が技術面で協力するのが主眼。炉型の同一性を生かし、個々の対策で安全性がどれほど向上したかの評価や海外の知見やノウハウ、新技術などを共有し、既設炉の効果的な安全対策につなげる。
 ただ事業者同士のイニシアチブにより、アライアンスに基づき自主的・継続的な安全性向上を図るという意味では、これまでの協定にも通じる。
 東電福島第一原子力発電所事故以降、事業者が規制要求にとどまらず、安全性を追求する姿勢が厳しく問われるようになった。また、国の審議会などで進む東電HDの経営問題や原子力事業環境整備の議論と絡み、国の関与による業界再編の動きが原子力分野に波及する可能性もくすぶる。
 原子力分野で拡大する事業者同士のアライアンスはこうした背景もにらみつつ、まずは「原子力安全は民間事業者が主体的に担う」という姿勢を明確に示したものといえそうだ。(新田 剛大)

(電気新聞2016年10月20日付1面)