エネコミ

2017年10月配信

2017年 10月11日
豪ウィートストーンでLNG生産開始/JERA、九州電力など

◆日本勢が8割調達

 東京電力フュエル&パワー(F&P)と中部電力の合弁会社JERA、九州電力などは10日、オーストラリアの大型LNG(液化天然ガス)プロジェクト「ウィートストーン」でLNG生産が始まったと発表した。年890万トンの生産量のうちJERA、東北電力、九州電力の3社で約700万トンを引き取る。足元のLNG市場は供給過多の状況だが、世界的には需要の伸びが見込まれ、将来は価格高騰の懸念もある。3社は地政学リスクが比較的低いオーストラリアからの調達を本格化することで、LNGの安定供給につなげる狙いだ。九州電力にとっては、LNGプロジェクトで上流権益を取得した初の案件となる。
 ウィートストーンは米シェブロンがオペレーターを務める。西オーストラリア州北西部沖合にあるウィートストーン・イアゴガス田、ジェリマー・ブルネロガス田から海上プラットフォームを経て、産出される天然ガスを用いて年890万トンのLNGを生産するプロジェクト。全2系列の生産設備のうち、先に完成した第1系列の生産が始まった。
 LNGの主な引き取り手は日本のエネルギー会社だ。20年の長期契約で520万トンを引き取るJERAを筆頭に、東北電力は年92万トン、九州電力は年83万トンの調達を見込む。3社合計の調達量は695万トンで、生産量の8割弱を日本勢が引き取ることになる。
 中東と比べて地政学リスクが比較的低いといわれるオーストラリアの大型プロジェクトが本格始動したことが、日本のエネルギー会社のLNG調達に及ぼす影響は決して小さくない。
 JERAの場合、2016年度に調達した約3500万トンのLNGのうち、カタールからの輸入が約2割を占め、オーストラリアを上回ったが、ウィートストーンプロジェクトの生産設備が全て稼働すれば2国の順位は逆転する可能性が高い。東北、九州の両電力会社にとっても、オーストラリアからの調達拡大は供給安定性の確保という点で意義のある試みといえそうだ。
 JERAと九州電力はLNGの引き取りだけでなく、同プロジェクトへの出資参加を通じて一部権益も取得している。
 JERAは石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、三菱商事、日本郵船と共同出資する子会社を通じて、ウィートストーン・イアゴガス田鉱区開発権益10%、LNGプラント事業権益8%を保有する。権益持ち分相当として、70万トン(520万トンの内数)のLNGがJERAに供給される。
 九州電力もウィートストーン・イアゴガス田鉱区開発権益1.83%、LNGプラント事業権益1.464%を取得している。

(電気新聞2017年10月11日付1面)