エネコミ

2016年6月配信

知っておきたいエネルギーのおはなし(2)

この間、テレビで“天然ガスで走る自動車”が紹介されていたよ。
ガソリンじゃなくても車って走るんだねぇ。
わたしのイラスト
じぃじのイラスト そうだよ。
天然ガスは、私たちの暮らしのなかでいろいろなことに利用されているんだ。
じゃあ今日は天然ガスについて勉強してみよう!

日本のエネルギーの約2割を占める天然ガス

じぃじ 日本では電気などのもとになる一次エネルギー(注1)として、主に石油・石炭・天然ガスなどを利用しているけど、その中で天然ガスは3番目に多い割合で利用しているんだ。(注1)一次エネルギー:
人間が利用するエネルギーのうち、変換加工する以前の、自然界に存在するもの。薪・木炭,石炭・石油・天然ガス、太陽放射・地熱・風力・水力・原子力など。原子力は一次エネルギーに入れない考え方もある。
わたし 天然ガスって確かほとんど輸入に頼っているんだよね?
じぃじ うん。天然ガスは、新潟県や北海道など国内でも産出されているけど、その量は国内消費の3%程度なんだ。だからほとんどは外国から輸入しているんだよ。
わたし 天然ガスって気体だよね。
どうやって日本まで運ぶの?風船にでも入れるのかしら。
じぃじ さすがに風船に入れては運ばないけど、天然ガスをとっても冷やして、液体にして船で運ぶんだ。なんとその温度はマイナス162度だよ!!
わたし マイナス162度!?でも、なんで液体にするの?
じぃじ 日本はたくさんの天然ガスを輸入しているけど、外国から効率よく運んでくるために、気体の天然ガスを液体にして体積を減らすんだ。
わたし 気体と液体だったら、液体のほうが体積が小さいもんね。
じぃじ そのとおり。液化した天然ガスは、専用の大型タンカーで一度にたくさん輸入しているんだ。
天然ガス・LNG(Liquefied Natural Gas)とは…
天然ガスのイメージ 天然ガスのイメージ
天然ガスは太古の昔、生き物の死骸が砂や泥の中に溜まり、長い年月地層の圧力を受けて変化したもの。油分が染み出て石油になり、それが地熱などで温められると気化し、地層の曲がった部分に溜まることでつくられる。 天然ガスに圧力を加え、マイナス162度まで冷却すると液体(LNG)になる。体積も600分の1になるため、一度に大量に運搬・貯蔵することができる。また、ほかの化石燃料に比べ二酸化炭素の排出量が少なく、クリーンエネルギーと言われている。
わたし 輸入した天然ガスはどこで貯蔵しているの?
じぃじ 専用のLNG基地でタンクの中に液体のまま貯蔵しているんだよ。
わたし そうなんだぁ。
じぃじ ちなみに、日本では、オイルショック以降、都市ガスや電力向けに天然ガスの消費が急速に増えていったんだ。これは世界的にも言えることなんだよ。
天然ガスは他の化石燃料よりも環境にやさしいと言われているから、これからもますます世界中で需要が増えていくだろうね。
わたし 環境にやさしいってどういうこと?
天然ガスのイメージ 天然ガスのイメージ
LNGを燃料とする新大分発電所。
燃料のLNGはオーストラリアやロシア、インドネシアなどから大分LNG基地に運搬され、タンクに貯蔵される。

CO2排出量が比較的少なく環境にやさしいエネルギー

じぃじ 「地球温暖化」という言葉を知ってるかな?
わたし うん、知ってるよ!二酸化炭素がその原因の一つと言われてるんだよね。今、日本も含めていろんな国が二酸化炭素を減らす取り組みをしてるって学校で習ったよ。
じぃじ そうだね。天然ガスを燃やすと、もちろん二酸化炭素が出るけど、石油や石炭に比べてその量が少ないんだ。しかも、天然ガスは液化の過程で硫黄分などの不純物をほぼ100%取り除くから、比較的環境にやさしいと言われているよ。

さまざまな資源をバランスよく利用する

わたし それなら、思い切って日本のエネルギーを全部天然ガスに替えちゃったらいいんじゃないかなぁ・・・?
じぃじ だけどオイルショックの時に経験したように、エネルギーをひとつの資源に頼ることは慎重に考えないといけないよ。
わたし どうして?
じぃじ もしもその資源が急に輸入できなくなったり、値段が突然上がったりしたとき困ってしまうだろう?それに、二酸化炭素の排出量が少ないといっても「石油や石炭と比較して」ということだから、天然ガスも燃やせばそれなりの量の二酸化炭素が出るんだよ。だから、発電時に二酸化炭素を出さない原子力や風力・太陽光などを、天然ガスに全て置き換えてしまうと、全体としては二酸化炭素の発生量は増えてしまうね。天然ガスに限らず、偏りなくバランス良く資源を利用していくことはとっても大事なことなんだよ。
わたし 食事もエネルギー資源もバランスが大事ってことね!
じぃじ いいこと言うなぁ。じゃあ、次回も天然ガスについてもう少し勉強してみようね。
まとめ
 日本の一次エネルギー構成の約20%を占め、重要な資源のひとつである天然ガス。その割合は、オイルショック当時の1970年代にはわずか2%程度でした。ですがそれ以降、都市ガスや電力向けに天然ガスの消費が急速に拡大し、現在では日本の産業活動と暮らしを支える重要なエネルギーのひとつとなっています。
 しかしながら天然ガスにも他のエネルギー資源と同様に一長一短があり、私たちはエネルギーの利用について、さまざまな視点から考えていく必要があります。
 次回は日本における天然ガスの調達の状況と、今話題のシェールガスについて考えます。