エネコミ

2016年9月配信

知っておきたいエネルギーのおはなし(5)

じぃじ、今日は石炭のお話をもう少し聞きたいな。 わたしのイラスト
じぃじのイラスト よぉ~し。
じゃあ早速、石炭の特徴について勉強していこうね。

供給安定性に優れ、価格が安く経済的な石炭

じぃじ 石炭のいいところは、大きく二つあるよ。一つめは、供給安定性に優れていること。石炭は石油のように埋蔵地域に偏りがなく、世界中に分散して存在しているし、埋蔵量も多いんだ。可採年数、つまり“石炭を採ることのできる期間”が比較的長くて、約110年と言われているよ。
世界のエネルギー資源確認埋蔵量のイメージ
わたし 110年かぁ。すごいね。二つめのいいところは?
じぃじ 価格の安さだよ。同じ熱量を生み出すためにかかるコストが、化石燃料のなかで一番安く済むんだよ。
わたし それはいいね。

二酸化炭素の排出量が大きいことが課題

じぃじ でも石炭火力発電は、地球温暖化の原因と言われている二酸化炭素(CO2)や、環境に影響を与える硫黄酸化物(SOx)などの排出量が多いことが問題とされているよ。
わたし ふぅん。そうなんだね。
じぃじ 環境のことを考えて、上手に石炭を使っていくことが大切なんだ。ちなみに今日本では、石炭を効率良く、かつ環境への影響を抑えてクリーンに利用する技術“クリーンコールテクノロジー”の開発が進められているよ。
わたし すごーい!そんな技術が開発されているんだね。
じぃじ うん。ポイントは、“発電効率”を高めることだよ。
わたし 発電効率ってなぁに?
じぃじ わかりやすく言うと、同じ量の石炭から、どれだけ電気を生み出せるかを示す指標のことだよ。発電効率が高くなれば石炭を使う量が少なくて済むから、環境への影響も減るんだ。現在日本では技術の進歩によって発電効率が高まっていて、世界一といわれているんだ。
わたし 日本の技術力ってすごいんだね!
じぃじ 新しい発電方法も生みだされているよ。「石炭ガス化複合発電(IGCC)」や「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)」というものなんだけど…。
わたし どんな発電方法なの?
じぃじ IGCCは石炭を使って2度発電することで、より多くの電気を得られる方法だよ。はじめは石炭を蒸し焼きにして、発生するガスを燃やして発電。次はそのときに排出された熱で蒸気をつくって発電するんだ。昨年日本で初めてのIGCCの商用運転がスタートしたんだよ。さらにIGFCは、石炭を蒸し焼きにしたときに発生するガスの中の水素ガスを使って燃料電池で発電するんだ。あわせて3度も発電できるから、もっと発電効率が高くなるんだよ。
わたし ふぅん。日々進化しているんだね!
じぃじ うん。発電効率の向上と同時に、SOxなどを除去する技術も向上しているから、今では天然ガス発電と同じくらいにまでSOxなどの排出量が抑えられているんだよ。
わたし そうなんだね。
じぃじ さらに、CO2をあつめて、地中に埋めてしまう技術も注目されていて、効率の良い発電方法と組み合わせることでCO2排出量ゼロ達成への期待が高まっているよ。そんな“理想の石炭火力発電所”実現に向け、今も技術開発が進められているんだ。
わたし 知らなかった!石炭のイメージが変わりそうだね。
(2012年) 主要国の発電電力量あたりのSOxとNOx排出量のグラフ

世界の環境負荷軽減に期待される日本の技術

じぃじ 政府が出したエネルギー基本計画では、こうした技術を日本だけでなく海外でも導入を進めていくことで、地球全体で環境負荷の低減と両立した形で石炭を利用していく必要があるとされているよ。
わたし 環境問題は、地球のみんなで解決しないといけないことだね。
じぃじ そうだね。世界では石炭火力発電を広げていこうとしているから、日本の技術を海外に広めることで国際社会に貢献することができるんだよ。
まとめ
 優れた供給安定性と高い経済性、また中国やインドなどの新興国の急速な経済発展などを背景に、世界各国では石炭火力発電を拡大していく方向にあります。その一方で、地球規模での環境負荷低減は早急に解決すべき重要な課題です。
 これからは、日本が高い技術を誇るIGCCやIGFCなど、発電効率を高める新しい発電方法を海外にも導入・推進し、石炭のメリットと環境負荷低減を両立させながら利用していくことが期待されています。