SPECIAL GALLERY
一つのプロジェクト、
それは様々な知見が結集して成り立っていく。
今回は、九電グループ初の取組みであり、
世界から注目が集まる
「アブダビ海底直流送電事業」において
事業運営とエンジニアリングという
二つの分野をクローズアップし
どのような取組みや
関わりがあったのかを見てみよう。
主に事業企画・管理を担う九州電力 国際室(キューデン・インターナショナル)


事業運営
主に現地実働・技術を担う九州電力送配電
事業開発室

エンジニアリング

構想の発表と応札準備
2020.1-
世界のエネルギー企業が注目を集める
中東インフラ市場。
その中心地・アブダビで、
ひとつの国家プロジェクトが
静かに動き出した。

アラブ首長国連邦の国営石油会社 ADNOC が、
洋上施設と陸上送電網を結ぶ海底直流送電システムの構想を発表。
提案依頼書(RFP)が世界の有力企業に向けて発出され、
グローバルな競争が幕を開けた。
アラブ首長国連邦の国営石油会社 ADNOC が、
洋上施設と陸上送電網を結ぶ
海底直流送電システムの構想を発表。
提案依頼書(RFP)が世界の有力企業に向けて発出され、提案依頼書(RFP)が
世界の有力企業に向けて発出され、
グローバルな競争が幕を開けた。
九電グループもこれに応じ、
本格的な海外電力インフラ事業への参画に向けた
新たな挑戦が始まった。
九電グループもこれに応じ、
本格的な海外電力インフラ事業への
参画に向けた
新たな挑戦が始まった。
「構想の発表と応札準備」
における主な役割
-
事業運営
- • RFPなどの公募情報の精査と初期分析
- • 海外電力市場・政策・発注者(ADNOC)の
戦略に関する情報収集と解釈 - • パートナー企業(韓国電力、フランス電力)との
コンソーシアム交渉、出資比率・リスク配分の検討 - • 提案スキームの設計、収支予測、採算性の評価
- • 提案書作成に向けたチーム編成と
プロジェクトマネジメント
など
-
エンジニアリング
- • 公募情報の技術要求事項の分析と
技術的整合性の確認 - • 運用方針、ライフサイクル設計、
運転・保守を踏まえた設備構成の検討 - • 現地使用環境や国際基準等を考慮した
機器仕様検討 - • 長期運転を前提としたO&M体制の検討
- • 上記を考慮した提案書(技術セクション)の作成
など
- • 公募情報の技術要求事項の分析と
主な取組み1情報収集・初期分析
海外事業を担当する国際室(キューデン・インターナショナル)や
事業開発室を中心に、RFPの内容を詳細に精査。
加えて、アブダビの電力政策、ADNOCの戦略、案件スキームや採算性の検討が、
社内横断チームで行われた。
海外事業を担当する国際室(キューデン・インターナショナル)や
事業開発室を中心に、RFPの内容を詳細に精査。
加えて、アブダビの電力政策、ADNOCの戦略、案件スキームや採算性
の検討が、
社内横断チームで行われた。
海外事業を担当する
国際室(キューデン・インターナショナル)や
事業開発室を中心に、RFPの内容を詳細に精査。
加えて、アブダビの電力政策、ADNOCの戦略、
案件スキームや採算性の検討が、
社内横断チームで行われた。

まず仲間をつくる。
それが最初の勝負だった。

本入札は、キューデン・インターナショナルと送配電カンパニー(現・九州電力送配電)による共同体制で実施され、入札準備は両組織の混成チームで進められた。送配電として初の海外投資案件であり、社内での理解や関与への機運醸成には一定の工夫と働きかけが必要だった。そのため、毎日の定例会議開催や投資会社設立を含む各種業務を分担し、丁寧な調整を重ねた。(F.K)
主な取組み2パートナー選定とコンソーシアム構築
グローバルな競争を勝ち抜くため、韓国電力(KEPCO)、フランス電力(EDF)との協議を開始。
各社の強みやネットワークを見極めつつ、出資比率・役割分担・リスク配分の枠組みが練られた。
グローバルな競争を勝ち抜くため、韓国電力(KEPCO)、フランス電力
(EDF)との協議を開始。
各社の強みやネットワークを見極めつつ、出資比率・役割分担・リスク
配分の枠組みが練られた。
グローバルな競争を勝ち抜くため、
韓国電力(KEPCO)、フランス電力(EDF)との
協議を開始。
各社の強みやネットワークを見極めつつ、
出資比率・役割分担・リスク配分の枠組みが練られた。

コロナ禍で画面越しの数か月、
そしてドバイへ。

当時は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、パートナー選定から、パートナー間の役割分担や責任をまとめる共同開発契約(JDA)作成といった入札準備の大半がリモート会議を通じて進められていた。実際にパートナー企業のメンバーと対面で会う機会が訪れたのは、2020年11月。ドバイに集まり、入札資料を仕上げるための作業を行った時だった。数か月にわたる協議を経て、初めて対面での作業となったこの機会では、限られた約1週間という短期間で協力しながら資料を完成させたことが、特に印象に残っている。(S.S)

世界の技術者と議論を重ね、
築き上げた
結束と新たな自信。

海外のプロジェクトに取り組むのは、当社としても初めての経験であり、最初は膨大な量の英語の技術図書を読み込んで内容を理解するだけで精一杯だった。しかし、入札で勝つには、最適な設備構成で安定した電力を供給できる設備をいかに低コストで提案できるかが重要であり、社内の技術的知見をフル活用し、パートナー(KEPCO、EDF)の技術メンバーとも熱い議論を交わしながら提案書をまとめていった。会議はリモートが中心だったが、重要なタイミングでは現地に出張し対面で議論することで、チームとしての結束を固めることができ、自分自身も自信を持てるようになった。(Y.I)

数千のシナリオを紡ぎ出した、
勝利へのシミュレーション。

毎日の業務の合間にもRFPを読み込み、この入札におけるポイント、勝ち筋は何かを考え続けた。起こり得る事象、許容可能なリスク等を網羅的に洗い出した上で、全てキャッシュフローに落とし込み、結果として想定したシナリオは数千通りとなった。(F.K)
主な取組み3応札準備の本格化と横断チーム結成
提案締切に向け、社内に横断型のプロジェクトチームを編成。
技術、財務、法務、経営企画、リスク管理など多様な部門の専門人材が集結し、
提案書作成に着手した。
提案締切に向け、社内に横断型のプロジェクトチームを編成。
技術、財務、法務、経営企画、リスク管理など多様な部門の専門人材
が集結し、
提案書作成に着手した。
提案締切に向け、
社内に横断型のプロジェクトチームを編成。
技術、財務、法務、経営企画、リスク管理など
多様な部門の専門人材が集結し、
提案書作成に着手した。

提出ボタンを押したのは、
締切30分前だった。

現地においては、入札額等について各スポンサー間で激しく議論が重ねられ、最終的に全てが決定したのが入札日当日の現地時間朝6時(入札期限の6時間前)。そこから、大急ぎで入札資料を作成した。最終局面ではシステムトラブルも発生・締切30分前になってようやく提出を完了した。緊張感の中で時に激しく意見を交わし合った他スポンサーのメンバーとも最後には抱き合い、入札後は18時間ほど泥のように眠った。(F.K)
このフェーズは、海外送電事業への“初挑戦”として、九電グループが世界市場に打って出た起点である。
限られた準備期間の中で、事務系と技術系が密に連携し、入札提案をひとつの形にまとめ上げた。事業性の検証、パートナー選定、契約構成の設計などを担った事業管理部門と、設備仕様・運用方針を詰めたエンジニアリング部門。異なる専門性をもつ社員たちが、それぞれの知見を持ち寄り、遠隔地のパートナーらと協働した。その一体感こそが、九電グループの国際事業における“はじまりの力”だった。

契約交渉と意思決定
2020.12-
提案が選ばれた。
それは誇らしい瞬間だった。
だが、それは「終わり」ではなく、
むしろ「始まり」だった。

35年間という長期契約を前に、
九電グループに求められたのは、
国際舞台で交渉と意思決定を担う
「実行者」としての覚悟と実力だった。
35年間という長期契約を前に、
九電グループに求められたのは、
国際舞台で交渉と意思決定を担う
「実行者」としての覚悟と実力だった。
アブダビ国営石油会社(ADNOC)との詳細交渉が始まり、
送電単価、性能保証、リスク配分、契約スキームなど、
すべての項目において“その一文”に責任が問われるステージが始まった。
アブダビ国営石油会社(ADNOC)との
詳細交渉が始まり、
送電単価、性能保証、リスク配分、
契約スキームなど、
すべての項目において“その一文” に
責任が問われるステージが始まった。
「契約交渉と意思決定」
における主な役割
-
事業運営
- • 契約交渉(送電契約/EPC契約/LTSA/SHA等)の
詳細交渉 - • リスク配分・料金単価・商務条件の調整
- • 社内稟議・意思決定のとりまとめ
など
- • 契約交渉(送電契約/EPC契約/LTSA/SHA等)の
-
エンジニアリング
- • 設計内容・性能条件の再評価と成立性確認
- • 海底ケーブルや環境影響評価などの技術課題対応
- • 技術アドバイザーやEPCとの折衝
- • 仕様変更の技術的検討や再試算対応
など
主な取組み1契約条件の交渉と構築
提案が選定された後、まず着手したのはADNOCとの詳細交渉。
送電単価、支払スキーム、性能保証、契約期間中のリスク分担――
“その一文”が未来の責任を左右する交渉が続いた。
九電グループはパートナーである韓国電力(KEPCO)、フランス電力(EDF)とともに、
国際交渉の最前線に立ち、契約スキームの骨格をつくり上げた。
提案が選定された後、まず着手したのはADNOCとの詳細交渉。
送電単価、支払スキーム、性能保証、契約期間中のリスク分担――
“その一文”が未来の責任を左右する交渉が続いた。
九電グループはパートナーである韓国電力(KEPCO)、フランス電力
(EDF)とともに、
国際交渉の最前線に立ち、契約スキームの骨格をつくり上げた。
提案が選定された後、まず着手したのは
ADNOCとの詳細交渉。
送電単価、支払スキーム、性能保証、
契約期間中のリスク分担――
“その一文”が未来の責任を左右する交渉が続いた。
九電グループはパートナーである
韓国電力(KEPCO)、フランス電力(EDF)とともに、
国際交渉の最前線に立ち、
契約スキームの骨格をつくり上げた。

交渉のすべてに向き合い、
責任を築いていった日々。

入札後、2021年3月のショートリスト選定、5月の優先交渉権者選定を経て、契約締結までの約9か月間は、数多くの商務・技術的課題を乗り越える必要があった。特に、ケーブルルートの変更や環境影響評価(EIA)に関しては、複数の利害関係者との調整が難航した。だが、各所と丁寧に協議を重ねることで合意形成へと導き、契約スキームの構築に貢献した。(S.S)
主な取組み2技術・リスク面の再検証と合意形成
応札時の技術提案に対し、再度ゼロベースでの成立性を検証。
海底ケーブルのルートや送電設備、通信制御まで、35年にわたる運用を見据えて精査し、
EPC事業者(Samsung C&T・Jan De Nul)とも初期協議を開始した。
技術的成立性・リスク分担の調整と並行し、環境影響評価や仕様変更にも柔軟に対応した。
応札時の技術提案に対し、再度ゼロベースでの成立性を検証。
海底ケーブルのルートや送電設備、通信制御まで、
35年にわたる運用を見据えて精査し、
EPC事業者(Samsung C&T・Jan De Nul)とも初期協議を開始した。
技術的成立性・リスク分担の調整と並行し、
環境影響評価や仕様変更にも柔軟に対応した。
応札時の技術提案に対し、
再度ゼロベースでの成立性を検証。
海底ケーブルのルートや送電設備、通信制御まで、
35年にわたる運用を見据えて精査し、
EPC事業者(Samsung C&T・Jan De Nul)とも
初期協議を開始した。
技術的成立性・リスク分担の調整と並行し、
環境影響評価や仕様変更にも柔軟に対応した。

交渉現場で知った、
言葉の重みと決断の責任。

参画から5か月目、初めての海外出張でドバイに渡航し、契約交渉に参加した。契約締結期限が迫る中、価格高騰を背景とした交渉が難航し、EPCやアドバイザーとの調整、発注者との交渉は深夜3時まで続いた末に一度決裂した。私は交渉の全体像を把握するだけでも精一杯だったが、現場の緊張感と意思決定の重みを肌で感じたことで、自らの立場や責任の大きさを実感する貴重な経験となった。(Y.I)
主な取組み3契約文書の作成と最終合意
PPAやSHAなどの主要契約について、ドラフトレビュー、修正、調整を繰り返し、
国際交渉と社内決裁を同時に進めた。
関係各所と粘り強く合意形成を図り、ついに契約調印に至った。
PPAやSHAなどの主要契約について、ドラフトレビュー、
修正、調整を繰り返し、
国際交渉と社内決裁を同時に進めた。
関係各所と粘り強く合意形成を図り、ついに契約調印に至った。
PPAやSHAなどの主要契約について、
ドラフトレビュー、修正、調整を繰り返し、
国際交渉と社内決裁を同時に進めた。
関係各所と粘り強く合意形成を図り、
ついに契約調印に至った。

崩れかけた契約。
粘りと連携でつかんだ着地。

契約締結に向けて、キューデン・インターナショナルや九電送配は関係各所と連日深夜まで協議を重ねていた。社長によるリモート調印式やプレスリリースの準備も進められていたが、直前になってEPCの1社から契約内容に関する異議申立てがあり、調印は一時中断。関係者に動揺が広がる中、キューデン・インターナショナルは粘り強く協議を重ね、締切ぎりぎりで契約が成立した。今振り返ると、EPC側の交渉戦略だった可能性もあるが、最後まで予断を許さない展開だったことは鮮明に記憶に残っている。(Y.I)

主要契約締結、
胸に去来した交渉の日々。

2021年12月21日、主要契約が締結された。池辺社長(当時)が出席した署名式の映像を見たとき、数々の交渉の記憶がよみがえり、深い感慨を覚えた。(S.S)
このフェーズは、九電グループが“国際事業の当事者”として、責任を引き受けた時間である。
入札選定後の約9か月間、事務系と技術系が一体となり、交渉と調整を重ねながら、契約条件を一文一語まで練り上げていった。送電単価、保証、リスク分担――世界との協議と社内稟議を往復し、交差する視点をすり合わせる日々。
その積み重ねの先にあったのは、35年という未来に責任をもつ契約合意であり、国際舞台における“信頼を築く力”だった。
2021年12月21日。九電グループは、
韓国電力(KEPCO)、
フランス電力(EDF)とともに、
アブダビ国営石油会社(ADNOC)との間で、
35年間の長期送電契約を締結。
すべての合意が揃い、
契約書に署名が施されたその瞬間。
世界と向き合い、
九電グループが“責任を持つ立場”として
国際事業に踏み出したことを、
誰もが実感した時間だった。

実行体制の構築と準備
2021.12-
“契約をつくる”から、
“プロジェクトを動かす”へ。
図面に描かれた構想が、
初めて「現実」と接続される
時間が始まった。

2021年12月21日、九電グループは
韓国電力(KEPCO)、フランス電力(EDF)とともに、
アブダビに特別目的会社「ADOPT※」を設立。
事業の実行体制が始動した。
2021年12月21日、九電グループは
韓国電力(KEPCO)、フランス電力(EDF)とともに、
アブダビに特別目的会社「ADOPT※」を設立。
事業の実行体制が始動した。
送電契約に基づく設計・調達・建設の準備、
そして融資契約(Financial Close)に向けた実務調整が、
ここから本格化していく。
送電契約に基づく設計・調達・建設の準備、
そして融資契約(Financial Close)に向けた
実務調整が、
ここから本格化していく。
※Abu Dhabi Offshore Power Transmission Companyの略です
「実行体制の構築と準備」
における主な役割
-
事業運営
- • ADOPT(事業会社)の設立と現地体制整備
- • 融資契約に関する調整・契約文書整備
- • EPC契約実行に伴う商務折衝・プロジェクト管理
- • 社内調整、アドバイザー対応、銀行団協議の統括
など
-
エンジニアリング
- • EPC契約に基づく設計レビュー
- • 設備仕様・安全基準の適合性検証
- • 発注者との設計詳細協議及びレンダーからの
照会対応 - • 設計変更対応と運用視点での準備調整
など
主な取組み1プロジェクト法人(ADOPT)の設立と体制構築
契約締結と同時に、九電グループ・KEPCO・EDFの3社が出資する
特別目的会社「ADOPT」がアブダビに設立された。
オフィスの選定、登記・税務手続き、設備導入、現地法規への適合など、
ゼロからの体制づくりを現地で進行。
九電グループからの出向者も現地に入り、アブダビにおける実行拠点としての基盤整備を担った。
同時に、日本の本社側でも、財務・契約・技術・経営企画などのメンバーが遠隔支援を担当。
“現地”と“本社”が一体となって動く、二拠点体制が確立されていった。
契約締結と同時に、九電グループ・KEPCO・EDFの3社が出資する
特別目的会社「ADOPT」がアブダビに設立された。
オフィスの選定、登記・税務手続き、設備導入、現地法規への適合など、
ゼロからの体制づくりを現地で進行。
九電グループからの出向者も現地に入り、
アブダビにおける実行拠点としての基盤整備を担った。
同時に、日本の本社側でも、
財務・契約・技術・経営企画などのメンバーが遠隔支援を担当。
“現地”と“本社”が一体となって動く、二拠点体制が確立されていった。
契約締結と同時に、
九電グループ・KEPCO・EDFの3社が出資する
特別目的会社「ADOPT」がアブダビに設立された。
オフィスの選定、登記・税務手続き、
設備導入、現地法規への適合など、
ゼロからの体制づくりを現地で進行。
九電グループからの出向者も現地に入り、
アブダビにおける実行拠点としての基盤整備を担った。
同時に、日本の本社側でも、
財務・契約・技術・経営企画などのメンバーが
遠隔支援を担当。
“現地”と“本社”が一体となって動く、
二拠点体制が確立されていった。

「ホテルでの勤務」から始まった、
手づくりの現地拠点づくり。

一般的に、事業投資案件では、契約締結後に特別目的会社(SPC)が設立されるが、本件では契約と同時に設立された「ADOPT社」がプロジェクトの中核を担うこととなった。
私が現地入りした当初は、アブダビでの業務が本格化する2022年7月まで、月の半分を日本で、もう半分をアブダビのホテルで過ごしながら、リモートと現地を行き来する日々だった。
オフィスの選定から設備の導入まで、体制構築はすべて“ゼロから”。仲間たちと一緒に、拠点を一歩ずつ自分たちの手で整えていった時間は、まさに「手づくりの始動フェーズ」だった。(S.S)
主な取組み2EPC契約の実行管理と商務折衝
設計・調達・建設を担うEPC事業者(Samsung C&T、Jan de Nul)との間で、
具体的な設計・工事条件の確認が進んだ。
技術仕様、工程、品質、契約変更の対応フローなどをひとつひとつ明確化し、
プロジェクト管理体制を実装。
設計変更や施工手順に関わる協議では、コストや納期、
リスクを見据えた商務的な交渉が繰り返され、
“技術”と“契約”の間をつなぐ調整が事業を下支えしていった。
設計・調達・建設を担うEPC事業者
(Samsung C&T、Jan de Nul)との間で、
具体的な設計・工事条件の確認が進んだ。
技術仕様、工程、品質、契約変更の
対応フローなどをひとつひとつ明確化し、
プロジェクト管理体制を実装。
設計変更や施工手順に関わる協議では、コストや納期、
リスクを見据えた商務的な交渉が繰り返され、
“技術”と“契約”の間をつなぐ調整が
事業を下支えしていった。

技術力と調整力を武器に挑んだ、
ケーブルプロジェクトの最前線。

事業会社のケーブル課長補佐に任命され、ケーブル工事に関する会議のリードを任されるようになった。ケーブル工事においては、ルート変更に伴う追加調査や契約の見直しなど、多くの課題があったが、緊張の中で調整会議を主導し、何とか議論をまとめ上げることができた。また、ケーブルの製造工場が当初予定していた工場から変更された際には、メーカーから提示されたケーブルの性能試験データが不十分であると感じ、追加試験の必要性を強く主張した。最終的に追加試験を実施することでケーブルの品質維持に貢献することができ、発注者のADNOCも満足する結果となった。
これらの経験を通じて、技術対応力だけでなく、調整力や臆せず意見を述べることの重要性を学ぶことができた。(Y.I)
主な取組み3融資契約(ファイナンス・クローズ)に向けた調整
プロジェクトの建設費に関わる資金調達を実行するため、
国際金融機関との融資契約(Financial Close)に向けた準備が進行。
契約要件、リスク配分、保険・担保スキーム、EPC契約との整合性、
銀行団及びそのアドバイザーとの協議など、
数百に及ぶ項目に対して、技術・商務・法務の各担当が横断的に対応。
各国の商習慣や言語、法制度の違いも乗り越えて、2022年9月、正式に融資契約を締結。
プロジェクトは資金面でも大きな節目を迎え、次の「建設フェーズ」へと歩みを進めた。
プロジェクトの建設費に関わる資金調達を実行するため、
国際金融機関との融資契約(Financial Close)に向けた準備が進行。
契約要件、リスク配分、保険・担保スキーム、EPC契約との整合性、
銀行団及びそのアドバイザーとの協議など、
数百に及ぶ項目に対して、技術・商務・法務の各担当が横断的に対応。
各国の商習慣や言語、法制度の違いも乗り越えて、
2022年9月、正式に融資契約を締結。
プロジェクトは資金面でも大きな節目を迎え、
次の「建設フェーズ」へと歩みを進めた。
プロジェクトの建設費に関わる
資金調達を実行するため、
国際金融機関との融資契約(Financial Close)に
向けた準備が進行。
契約要件、リスク配分、保険・担保スキーム、
EPC契約との整合性、
銀行団及びそのアドバイザーとの協議など、
数百に及ぶ項目に対して、
技術・商務・法務の各担当が横断的に対応。
各国の商習慣や言語、法制度の違いも乗り越えて、
2022年9月、正式に融資契約を締結。
プロジェクトは資金面でも大きな節目を迎え、
次の「建設フェーズ」へと歩みを進めた。

契約の“山場”――融資銀行と
全関係者を巻き込んだ交渉の舞台裏。

本プロジェクトにおける初期の最大の山場は、融資契約(ファイナンス・クローズ)の締結だった。主契約の締結時には、融資銀行団と基本条件書(Term Sheet)で大枠の条件を合意していたが、それを実際の融資契約に落とし込むには、あらゆる関係者から個別に合意を取り付ける必要があった。当社だけでなく、パートナー企業からもアブダビに応援部隊が派遣され、発注者、EPCコントラクター、保険会社などとの綿密な協議を展開。多岐にわたる条件調整の結果、2022年9月、ついに融資契約が正式締結されたときには、本当に一息ついた気持ちになった。(S.S)

“まさか”の一報から、
朝7時の署名完了までの7時間。

融資契約の締結に向けては、社内稟議の対応も重なり、長期出張者を含む現地チームと日本側に分かれて毎日深夜まで作業が続いた。ようやく主要な対応を終えた署名締切日当日、夜アブダビのホテルのバーでひと息ついたその矢先、想定外の問題が発覚。慌ててS.Sと二人で部屋へ戻り、英国・フランス・韓国・アブダビ・日本の関係者をつないで緊急会議を開いた。最終的に署名が完了したのは、日本時間の朝7時。チャットで安堵と達成感を分かち合う中、涙を流すメンバーもおり、忘れがたい瞬間となった。(F.K)
このフェーズは、「構想」が「実行」へと切り替わる転換点だった。
契約の先に待っていたのは、現地法人の立ち上げ、EPCとの実行管理、国際金融機関との融資契約――多国籍・多領域のパートナーとともに、前例のない運営体制をゼロから組み上げる日々。現地と本社、日本と世界、技術と契約――あらゆる“境界”を越えて、実行の地盤が築かれていった。図面の中にあった事業が、現実の時を刻み始めたのは、このフェーズからだった。
そして2022年9月。
国際金融機関との融資契約が正式に締結され、プロジェクトは建設フェーズへと移行する準備を整えた。アブダビ沖の海と大地を舞台に、送電網という構想がついに動き出そうとしていた。

建設と運用準備
2022.9-
“設計図”は、ついに現場へ。
未来の送電網が、海の下で動き始めた。


2022年9月、九電グループを含む関係各社は、
国際金融機関との融資契約を正式に締結。
アブダビ海底送電プロジェクトは、本格的な建設フェーズへと移行した。
2022年9月、九電グループを含む関係各社は、
国際金融機関との融資契約を正式に締結。
アブダビ海底送電プロジェクトは、
本格的な建設フェーズへと移行した。
2023年には、プロジェクトファイナンスの構築力と
先進性が評価され、
「PFI Award 2022(アジア太平洋部門)」を受賞。
2023年には、
プロジェクトファイナンスの構築力と
先進性が評価され、
「PFI Award 2022
(アジア太平洋部門)」を受賞。
いま、アブダビでは九電グループの社員たちが、
海底ケーブル敷設など建設の最前線で奮闘を続けている。
いま、アブダビでは九電グループの社員たちが、
海底ケーブル敷設など建設の
最前線で奮闘を続けている。
「建設と運用準備」
における主な役割
-
事業運営
- • ADOPT社の運営、資金執行・契約履行の管理
- • 現地行政機関・関係者との調整
- • 工程進捗の監督、契約変更対応、商務判断の実行
- • 将来の運転・保守に向けた制度・報告体制の構築
など
-
エンジニアリング
- • 建設現場での工事監理、工程、品質確認
- • 施工・製造トラブルへの即時対応、対応策検討
- • 試運転(Commissioning)に向けた技術整備
- • 運転開始を見据えた技術文書、
保守運用対応の整備
など
主な取組み1グローバルな調達・輸送対応とリスク管理
海底ケーブルや主要機器の多くが欧州など国外で製造され、
アブダビまでの長距離輸送が必要となった。
輸送ルートには紅海やスエズ運河といった国際的な緊張地帯も含まれ、
安全確保とスケジュール管理が重要課題に。
国際情勢の変化を注視しながら、輸送手段やルートの見直し、現地港湾での受入体制構築など、
グローバルな連携のもとで慎重な調整が続けられた。
海底ケーブルや主要機器の多くが欧州など国外で製造され、
アブダビまでの長距離輸送が必要となった。
輸送ルートには紅海やスエズ運河といった国際的な緊張地帯も含まれ、
安全確保とスケジュール管理が重要課題に。
国際情勢の変化を注視しながら、輸送手段やルートの見直し、
現地港湾での受入体制構築など、
グローバルな連携のもとで慎重な調整が続けられた。
海底ケーブルや主要機器の多くが
欧州など国外で製造され、
アブダビまでの長距離輸送が必要となった。
輸送ルートには紅海やスエズ運河といった
国際的な緊張地帯も含まれ、
安全確保とスケジュール管理が重要課題に。
国際情勢の変化を注視しながら、
輸送手段やルートの見直し、
現地港湾での受入体制構築など、
グローバルな連携のもとで慎重な調整が続けられた。

毎日、輸送船の位置を確認していた。

2023年11月、紅海ではフーシ派による商船への攻撃が続き、多くの船が喜望峰回りへと航路を変更していた。我々のプロジェクトでも、欧州からアブダビへと送られる機材の多くがその影響を受ける可能性があった。特に、イタリア製の海底ケーブルは納期が非常にタイトで、製造元は紅海ルートを強行する判断を下した。私は毎日のようにウェブサイトで輸送船の位置を確認し、船舶からの報告を待ち続けた。刻一刻と変わる状況の中、何事もなくケーブルが到着したときには、心から安堵した。(S.S)

緊迫する紅海、
年末年始も休まらなかった。

ケーブル輸送では、スエズ運河や紅海といった国際情勢が不安定な地域を通過する必要があった。2023年末には、紅海での商船拿捕が報道されており、特に最初のケーブル到着が予定されていた2024年1月には、現地でのセレモニーも控えていたため、気が抜けない日々が続いた。年末年始も輸送船の位置情報に変化がないと、緊張が高まり、現場からの報告があるまで落ち着かなかったのを覚えている。(T.I)
主な取組み2建設現場との技術連携と運用準備
EPC事業者(Samsung C&T・Jan de Nul)による海底ケーブルや変換設備の建設が本格化。
現地事業会社を通じた監督・レビュー体制が整い、安全基準や設計変更への対応、
将来の運用に向けた技術的準備が段階的に進行している。
九電グループの現場対応が、巨大インフラの品質と進捗を支えている。
EPC事業者(Samsung C&T・Jan de Nul)による
海底ケーブルや変換設備の建設が本格化。
現地事業会社を通じた監督・レビュー体制が整い、
安全基準や設計変更への対応、
将来の運用に向けた技術的準備が段階的に進行している。
九電グループの現場対応が、巨大インフラの品質と進捗を支えている。
EPC事業者(Samsung C&T・Jan de Nul)による
海底ケーブルや変換設備の建設が本格化。
現地事業会社を通じた監督・レビュー体制が整い、
安全基準や設計変更への対応、
将来の運用に向けた技術的準備が
段階的に進行している。
九電グループの現場対応が、
巨大インフラの品質と進捗を支えている。

粘り強い交渉の末に得られた
解決策と今後への自信

海外案件では、請負先が自分たちに不利な情報を積極的に出してくるとは限らない。調査結果から設計変更が必要となった際、提示された対策案があまりに高額であったため、私は代替案を提示したが、「施工精度に問題が出る」として拒否された。しかし、あきらめずに交渉を続けた結果、双方が納得できる案に落ち着いた。後に現場を視察した際、私が提案した案でも施工精度に問題はなく、もっと自信を持って提案していれば、より早く解決できたと分かり、自らの経験と知識の重要性をあらためて実感した。(Y.I)
主な取組み3現地での事業運営と建設進捗管理
現地の事業会社「ADOPT」では、九州電力送配電及び
キューデン・インターナショナルからの出向者が常駐し、
建設状況の監視、契約履行の確認、支払い管理、地元調整などを担当。
日本の本社とも密に連携し、時差・言語・文化の違いを超えて、
実行力ある運営体制が築かれている。
現地の事業会社「ADOPT」では、
九州電力送配電及び
キューデン・インターナショナルからの出向者が常駐し、
建設状況の監視、契約履行の確認、
支払い管理、地元調整などを担当。
日本の本社とも密に連携し、
時差・言語・文化の違いを超えて、
実行力ある運営体制が築かれている。

支払い判断にも
契約知識が不可欠だった。

施工会社から提出される支払い関連資料について、国内の工事では技術面の確認のみで済むことが多かったが、本プロジェクトでは契約に基づいた時期・条件が明確に定められている。契約条文の解釈次第で判断が変わることもあり、商務的な視点も不可欠だった。双方の状況をすり合わせながら、支払いの妥当性を見極めたほか、トラブル発生時にも契約に基づく対応の是非を検討する必要があり、商務の重要性を実感した。(T.I)

技術だけでは
交渉を乗り越えられない。

国内工事では部門の役割が明確で、契約を強く意識しなくても業務が進められる。しかし海外では、契約条文の解釈の違いから追加コストをめぐるクレームが多く発生する。設計段階でも数多くの交渉に直面し、技術面だけでは対応しきれない場面も多かった。キューデン・インターナショナルから派遣されていた商務課長の助言を得て、条件緩和とクレームのパッケージ化という形で収束へと導き、契約書案の作成にも関わることができた。商務の観点を学び、成長につながる経験となった。(Y.I)

2025年前半、海底ケーブル敷設完了。

当社グループでは、九州電力送配電の知見を活かし、海底ケーブル敷設を主とする海洋工事に技術的貢献を行っている。現地事業会社には九州電力送配電から3名が出向中であり、設計や工程調整、安全基準の管理などに携わっている。多くの困難を乗り越えながら、現地と本社が一体となって施工を支援し、2025年7月に全海底ケーブルの敷設を完了した。(S.S)
このプロジェクトは
遥かなる時を超えて
2060年まで続いていく









