九州電力株式会社は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託して進める「イットリウム系超電導電力機器技術開発」の国家プロジェクト(注1)において、九州大学、財団法人国際超電導産業技術研究センター、株式会社フジクラ及び昭和電線ケーブルシステム株式会社と共同で、世界で初めてY系超電導線材 (注2)を適用した超電導変圧器(注3)を開発しました。本変圧器にて短絡性能を実証するとともに、Y系超電導変圧器の新たな機能である限流機能(注4)についても世界で初めて実証しました。
変圧器は超電導線材を適用することにより小型で高効率になります。特に、Y系超電導線材は臨界電流が大きく、細線化による損失低減や将来の低コスト化も可能となることからY系超電導変圧器の早期実用化が期待されています。
<今回の成果>
(1) |
Y系超電導変圧器(400kVA)にて電力系統の事故時等に発生する短絡電流と、その大電流に伴う強大な電磁力に耐えうる短絡性能を、世界で初めて実証。
⇒ Y系超電導変圧器の実用化に向けて大きく前進。 |
(2) |
超電導変圧器の新たな機能である限流機能を、Y系超電導限流機能付加変圧器(10kVA)の巻線にて、世界で初めて実証。
⇒ 本変圧器は、通常は変圧器として使用しますが、事故時には事故電流(大電流)で変圧器の超電導巻線が瞬時に常電導へ転移(電気抵抗が発生)することにより、事故電流と電圧低下を抑制する限流動作が可能なことを実証。
これにより、事故電流を抑制するとともに瞬時電圧低下抑制にも有効な「限流機能付加超電導変圧器」(注5)の実用化の可能性が高まりました。 |
今後は、同変圧器で低損失技術の実証を行い、2千kVA超電導変圧器システムの開発を経て、2万kVA級配電用超電導変圧器の早期実用化を目指します。
(注1) |
「イットリウム系超電導電力機器技術開発」(平成20~24年度:資源エネルギー庁からのNEDO交付金事業)のうち「Y系超電導変圧器の技術開発」は九州電力が九州大学、財団法人国際超電導産業技術研究センター、株式会社フジクラ及び昭和電線ケーブルシステム株式会社と共同でNEDOから受託して開発中。 |
(注2) |
「Y系超電導線材」とは、イットリウム(Y)やその他希土類(Gd等)の高温超電導体による線材。金属系の低温超電導体(-269℃冷却)に比べて冷却が容易(-196℃の液体窒素冷却)で、ビスマス(Bi)系高温超電導体より臨界電流や磁場特性に優れており、細線化による損失低減や将来の低コスト化も可能なことから、次世代の超電導線材として世界中で開発中。 |
(注3) |
「超電導変圧器」とは、変圧器巻線の銅線に代わり超電導線材を使用した変圧器。超電導線材の高電流密度や極小抵抗により、66/6.9kV-2万kVA配電用変圧器では、Y系超電導変圧器は既存油入変圧器と比較し、重量は約1/2、体積は約2/3、損失は約1/6と試算。 |
(注4) |
「限流機能」とは、電力系統の短絡事故電流が最大となる前(4ミリ秒以内)に電流を抑制する機能(瞬時電圧低下の抑制も可能)で、変圧器を含む電力系統の短絡容量の抑制対策に大きな効果(機器の電気的、機械的、熱的ストレスの対策が軽減できれば経済性でも有利)がある。また、その機能を有する「限流器」は既存技術では困難なため、超電導限流器が世界中で鎬を削って開発中。 |
(注5) |
「限流機能付加超電導変圧器」とは、超電導変圧器の超電導巻線を変圧器と限流器として利用する変圧器。各機器を個別に併設するより兼用することで小型となり効率や冷却性などで有利。現在まで開発例は無し。 |
【共同研究の機関】
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