1月に設置変更許可を受けてから3カ月。九州電力玄海原子力発電所3、4号機は佐賀県の山口祥義知事の同意表明により、再稼働へ向けて大きく前進した。
山口知事は2015年の就任時から、安全上の問題がないことや住民理解を前提に再稼働を容認する考えを示していた。
昨年末には県内各界代表に意見を聞く委員会を設置。県内首長との意見交換も行った。玄海町の岸本英雄町長は先行して今年3月、町議会の承認を踏まえ再稼働に同意。その後も知事は現地を視察した原子力防災相、経済産業相と面談し、避難計画や安全確保に関する国の姿勢を確認するなど慎重な手順を踏んだ。
佐賀県議会は今月13日、再稼働容認を決議。知事同意は満を持しての順当な判断といえる。
一方、15年に再稼働した川内原子力発電所と異なる課題も残る。自治体に避難計画策定が義務付けられる30キロメートル圏は玄海の場合、佐賀、長崎、福岡の3県にまたがる。圏内の一部住民からの不安の声に加え「地元同意」の対象が佐賀県と玄海町に限られることへの異論も出た。
2~3月にかけて住民説明会が佐賀県5カ所、長崎県5カ所、福岡県1カ所で開催され、原子力規制庁や九州電力は安全対策や避難計画について説明を尽くした。それでも慎重論は収まらず、佐賀県伊万里市、長崎県松浦市、平戸市、壱岐市は再稼働に反対している。
九州電力は引き続き、今月新設した立地コミュニケーション本部を中心に丁寧な地域対応を行っていく。特に30キロ圏に対しては玄海事務所(22人)の体制を拡充しコミュニケーション活動を強化する方針。24日、「佐賀県議会に続き、知事のご判断を大変重く受け止める。安全対策に不断の努力を重ねるとともに、残りの工事計画認可や保安規定変更認可に係る審査に真摯に取り組む」とのコメントを発表した。
仮に5月中に工認が下り、間を置かずに使用前検査の受検申請を行った場合、最短で9~10月頃の再稼働が視野に入る。川内1号機では工認取得から再稼働までに5カ月を要した。
川内1、2号機と玄海3、4号機の稼働は、九州電力の現行電気料金の前提条件だ。玄海の2基稼働による収支改善効果は1カ月当たり120億円程度。3年連続の黒字達成、自己資本比率が10%程度にとどまる財務状況の改善に大きく寄与する。競争時代が本格化する中、事業基盤を確立し攻めの経営に転じる上でも重要な一歩となる。
(電気新聞2017年4月25日付1面)