電源の低・脱炭素化(供給側)
ゼロエミッション電源比率を更に高めるなど、CO2排出「実質ゼロ」の電気を安定的に供給します
再エネの導入拡大や原子力発電の安全・安定運転等により、当社のゼロエミ・FIT電源比率(注)は約6割(2019年度)であり、国内のトップランナーです。
過去5年間の投資総額(2016~2020年度):約8,000億円
※FIT電気は非化石証書を使用していない場合、再生可能エネルギーとしての価値やCO2ゼロエミッション電源としての価値は有さず、火力電源などを含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われます。
なお、FIT電源に由来する非化石価値について、約8%相当(エネルギー供給構造高度化法上の達成計画における数値)が当社に帰属しています。
当社が発電した電力量及び他社から調達した電力量を基に算定しています(離島分を含みません)。
ゼロエミッション電源比率を更に高めるなど、電源の脱炭素化の早期実現を目指します。
今後5年間の投資総額(2021~2025年度):約5,000億円
主な取組み
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- グループ大での開発推進等による再エネの主力電源化
- 安全最優先と地域の皆さまのご理解を前提とした、将来にわたる原子力の最大限の活用
- 火力発電の更なる高効率化と新技術(水素・アンモニア等)の適用により、火力のCO2排出「実質ゼロ」を実現
電源の低・脱炭素化のイメージ
再エネの主力電源化(再エネ+蓄電)
- 九電グループの強みである地熱や水力の開発に加え、バイオマスや導入ポテンシャルが大きい洋上風力の開発を推進します。
〔国内外における再エネ開発量:2025年400万kW、2030年500万kW〕 - 火力発電の柔軟な運用や揚水発電所による蓄電等により、再エネの最大限の受入に貢献します。
- FITによる買取期間が終了した卒FIT電源や蓄電池、EV等、分散型エネルギーリソースの統合制御技術を確立し、アグリゲーション・ビジネスを展開します。
再エネの主力電源化
- 2030年KPI
- 再生可能エネルギー開発量:500万kW(国内外)
- 九電グループは、CO2を排出しない再生可能エネルギーを積極的に開発しており、2030年に再生可能エネルギーの開発量を国内外で500万kWとする目標を掲げています。
- 九電グループの強みである地熱や水力の開発に加え、導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマス等について、収益性も見極めながら拡大を図り、再エネの主力電源化を推進していきます。
Topics
- 2021年6月、九電グループの「電源の低・脱炭素化」への取組みについて、幅広いステークホルダーの皆さまにこれまで以上に知っていただくことや、資金調達の多様化を図ることを目的に、再エネの開発等、環境改善効果のある事業に使途を限定した債券「第1回九州電力グリーンボンド」を発行しました。
「第1回九州電力グリーンボンド」の発行概要
水力発電事業:新竹田発電所
地熱発電事業:大岳発電所
- 太陽光発電については、九州電力の発電所跡地等を活用し、メガソーラー発電事業に取り組んでいます。
- また、FIT制度による買取期間が終了した卒FIT電源の電力購入など、既存資源の有効活用に向けた取組みも推進していきます。
大村メガソーラー発電所 (九電みらいエナジー)
太陽光発電設備一覧(2022年2月末)
- 揚水発電所や世界最大級の大容量蓄電システムを備えた豊前蓄電池変電所などを活用し、再エネを最大限受け入れるとともに、出力変動に的確に対応し、電力の安定供給を達成しています。
- また、卒FIT電源や蓄電池、電気自動車(EV)など、分散型エネルギーリソースの統合制御技術を確立し、アグリゲーション・ビジネスを展開します。
大容量蓄電システム(豊前蓄電池変電所)
揚水回数の推移(再エネの最大限の受入に資する昼間帯揚水の増加)
分散型エネルギーリソースの統合制御技術
- 長期安定的かつ経済的な風力発電が可能な有望地点において、周辺環境との調和も考慮した上で、九電みらいエナジー等が開発に取り組んでいます。
- 2017年度より、九電みらいエナジーを中心とするコンソーシアムが福岡県北九州市響灘地区での洋上風力発電の実現(発電出力:最大約22万kW)に向けて取り組んでいます。
風力発電設備一覽(2022年2月末)
響灘沖の洋上風力発電(開発イメージ)
- 技術面、経済性、立地環境等を総合的に勘案し、地域との共生を図りながら、水力発電の開発に取り組んでいます。
- FIT・FIP制度等を活用しながら、古くなった既設発電所の更新や新規開発を推進し、未利用エネルギーの有効活用を図ります。
水力発電設備一覧(2022年2月末)
※発電設備更新に伴う出力増加分
- 九電グループの地熱発電は、国内で約22万kWと全国の設備容量の約45%を占めています。現在は、九州域内(5地点)、域外(1地点:福島県猿倉嶽)で地熱資源の調査を実施しており、今後も開発を推進していきます。
地熱発電設備一覽(2022年2月末)
※蒸気供給会社との共同開発・運営
九州域内の調査地点(2022年2月末)
- バイオマス発電は、自然由来の木材等で作った木質チップやペレットを燃料としているため、大気中のCO2の増減に影響を与えない※1こと且つ林地残材や家畜排泄物等の未利用エネルギーの活用は地域社会への貢献に期待できるため、事業の開発や発電事業者からの電力購入等を通じて普及促進に努めています。
- 九電みらいエナジーは、木質バイオマスの持続的な資源循環に向けた「バイオマス資源循環構想(みらい緑のリング)」のもと、従来からの発電事業を基盤に、上流となる木質ペレット生産事業と、下流となるバイオマス発電所の焼却灰有効利用の事業化を進めています。
※1 バイオマス燃料を燃やして排出されるCO2は、もともとCO2を植物が吸収したものであり、排出と吸収によるCO2のプラスマイナスはゼロになるため、CO2の総量は増えない、いわゆる「カーボンニュートラル」という炭素循環の考え方
バイオマス発電設備一覧 (2022年2月末)
※2 グループ会社が出資しているSPC(特別目的会社)による開発
ふくおか木質バイオマス発電所(福岡県筑前町)
下関バイオマス発電所(山口県下関市)
バイオマス資源循環構想(みらい緑のリング)
Topics
- 環境省の公募に2019年5月に採択され、長崎県五島市の奈留瀬戸において、国内初となる大型潮流発電(500kW)の実証試験を2021年1月から開始しています。(2022年3月終了)
- 潮流発電とは潮流(潮の干満によって生じる海水の流れ)を使い、プロペラの回転を介して発電を行う方式であり、西日本においては大きな開発ポテンシャルがあります。
潮流発電に関する検討体制
海外事業の積極展開
- 2030年KPI
- 再生可能エネルギー開発量:500万kW(国内外)
- 九電グループが国内外で蓄積した電気事業等に関する技術・ノウハウを活かし、世界各国でエネルギー関連事業を展開しています。将来の市場拡大も見据え、期待の高い成長事業の一つと位置づけ、 2030年海外持分出力目標500万kWの達成に向け、展開エリアや事業領域の拡大を積極的に推進しています。
- 再エネについては、収益性や立地国の地域特性を見極めながら最大限推進し、2030年の国内外の再エネ開発量500万kWを目指します。
- 火力発電については、経年が進展している火力機の代替として最新鋭の高効率火力を建設するなど、当該国のエネルギー事情も勘案しつつ参画し、社会のGHG排出削減に貢献します。
- また、島しょ国を中心としたマイクログリッド事業及び九州で培った再エネ導入対応等の経験を活かしたコンサルティング事業を展開するなど、地域や時代のニーズに応えるエネルギーソリューションを提供します。
具体的な取組み事例(青枠はコンサルティング事業)
原子力の最大限の活用(原子力)
- 原子力は、エネルギー密度が高く、発電時にCO2を排出せず、天候・気候に左右されない安定的な電源です注1。
- 安全最優先と地域の皆さまのご理解を前提として既設炉の設備利用率の向上に取り組むなど、最大限活用します。
- 将来的には、安全性に優れた、次世代軽水炉、SMR注2や高温ガス炉等、次世代原子炉や、水素製造への原子力エネルギーの活用を検討します。
注1 原子力発電によって生じる使用済燃料を再処理した際に発生する高レベル放射性廃棄物については、最終的に地下深く安定した地層に処分される方針です
注2 Small Modular Reactor:小型モジュール炉
SMR(小型モジュール炉)
- 事故時に外部電源を要しない静的安全システム
- 炉内自然循環冷却+蒸気発生器内蔵の一体型原子炉
➡冷却材喪失等の事故発生を原理的に排除
高温ガス炉+水素製造(イメージ)
- 耐熱性に優れる黒鉛炉心/セラミック被覆燃料と、
高温でも安定なヘリウムガス冷却材
➡高温熱利用により、発電以外の水素製造等に活用可能 - 炉外の空気自然循環・放熱による炉心冷却
➡冷却材が喪失しても炉心損傷に至らない
原子力の最大限の活用
- 原子力は、CO2排出抑制面やエネルギーセキュリティ面等で総合的に優れた電源であることや電力を長期に安定して確保する観点から、安全性の確保を大前提に、最大限活用していきます。
- 現在稼働中の原子力発電所について、引き続き安全性・信頼性向上に取り組み、最大限の活用に向けて安全・安定運転を継続していきます。また、安全の確保を大前提として、設備利用率の向上に向けた検討を早期に本格化していきます。
原子力発電設備一覧 (2022年2月末)
(注)玄海1号は2015年4月、玄海2号は2019年4月に運転終了
※1 2013年度のCO2排出係数 (調整後)0.617kg-CO2 /kWhを使用
Topics
- 川内原子力発電所1、2号について、原子炉等規制法に基づく運転期間延長認可申請に必要な特別点検を、1号は2021年10月18日から開始し、2号機は2022年2月下旬から開始しています。
- 運転開始後40年を超えて原子力発電所を運転する場合は、特別点検の結果等を添付して、原子力規制委員会に運転期間延長認可申請を行い、認可を受ける必要があります。
- 今後、特別点検を行い、その結果等を踏まえた上で、運転期間延長認可申請について判断する予定です。
火力のCO2排出「実質ゼロ」(火力+新技術等)
- 火力発電については、引き続き、更なる高効率化に取り組みます。
- 供給力やエネルギー供給コスト、立地地域の事情等を勘案し、非効率石炭火力の2030年までのフェードアウトを目指します。
- 再エネ余剰電力を活用したCO2フリー水素・アンモニアの製造、混焼を検討し、将来的には、混焼率の向上、専焼化を目指します。また、水素・アンモニアの調達等、サプライチェーンの構築を検討します。
- CCUS(注)/カーボンリサイクルの技術適用、森林吸収やクレジット活用等についても検討します。
(注)Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:CO2回収・有効利用・貯留
水素・アンモニア製造・混焼
CCUS/カーボンリサイクル
森林吸収〔九州林産:九電グループ〕
適正な森林管理によるCO2吸収
社有林「山下池山林(大分県)」
- 九州電力社有林面積:4,447ヘクタール(PayPayドーム630個相当)
- 管理本数(2020年度末):504万本(人工林のみ)
- CO2固定量(2020年度):130.5万トン〔カーボンニュートラルへの寄与〕
火力発電の低炭素化
- 火力発電については、再エネの出力変動に対する調整力として、機動性に優れるLNGコンバインドに加え、石炭火力においても早くから中間負荷対応としての設計・運用を取り入れ、再エネの導入拡大に多大な貢献をしています。
- 今後も、更なる再エネ導入拡大への対応と安定供給の両立を図りつつ、高効率化や、非効率石炭火力の2030年までのフェードアウトに向けた対応、燃焼時にCO2が発生しない水素・アンモニアなど発電用燃料の活用、CO2回収技術の適用検討など、低炭素化への取組みを積極的に進めていきます。
Topics
- 太陽光発電をはじめとした再エネの出力制御を行う際には、再エネ特措法に定められた優先給電ルールに基づき、揚水発電の活用に加え、火力機を停止または出力を最大限抑制した運用を実施しています。
- 仮に、昼間に多くの火力を停止すると、太陽光の出力がほぼゼロとなる夕方に火力の出力上昇が間に合わず、需要に見合った供給力が確保できなくなる虞があります。
- このため、当社の火力は昼間帯において、系統連系上の要件(50%)よりも大幅に低い最低出力(15%)やDSS(Daily Start Stop)機能を活かした運用を機動性高く的確に行い、再エネの最大限の受入や電力の安定供給に大きく貢献しています。
九州の電力需給(2020年3月8日)
自社石炭火力発電機の稼働状況(2020年3月8日)
ベンチマーク指標の達成 (非効率石炭火力のフェードアウトに向けた対応)
- 2030年KPI
- 省エネ法 ベンチマーク指標(A指標/B指標/石炭単独指標)の達成
- 2019年12月に営業運転を開始した松浦発電所2号をはじめとした熱効率の高い石炭火力・LNGコンバインドの運転やカーボンフリー燃料の活用などにより、2030年の省エネ法ベンチマーク指標達成を目指します。
- 非効率石炭火力については、国のエネルギー政策を踏まえつつ、電力安定供給やエネルギーコストの観点、立地地域の事情等を勘案し、2030年までのフェードアウトを目指します。
ベンチマーク指標の推移
※石炭単独指標については2023年度より省エネ法報告対象
当社の石炭火力発電所一覧(2022年2月末)
Topics
- 当社は福岡県北九州市でLNGを燃料とした発電所の開発について、西部ガスと共同で事業化を検討中です。
- 発電方式には、最新鋭のコンバインドサイクルを採用し、1990年代運用開始のコンバインドサイクルと比べ、CO2排出を20%以上削減できる見込みであり、将来的には、カーボンフリー燃料(アンモニア・水素)の活用も検討します。
新規LNGコンバインドサイクル発電所の事業化検討
カーボンフリー燃料の混焼技術確立
- 2030年KPI
- 水素1%・アンモニア20%の混焼に向けた技術確立
- 火力発電における水素・アンモニアの混焼について、社会実装に向け重要視される「量・価格・サプライチェーン」のイノベーションを注視し、経済合理性との両立を追求しながら、電源側のカーボンニュートラルに火力発電として最大限貢献します。
- 具体的には、カーボンフリー燃料の大量利用時に発電できるよう2030年までに水素1%・アンモニア20%混焼に向けた技術を確立します。
水素・アンモニアの混焼
Topics
- 当社は、2021年9月27日に、世界最大手の窒素系肥料メーカーであるヤラ・インターナショナル社と、クリーンアンモニア(ブルーアンモニア・グリーンアンモニア)の協業検討について覚書を締結しました。
[具体的に検討を進める内容]
- クリーンアンモニアの生産から、発電所における利用までのサプライチェーンの構築
- 九州周辺におけるクリーンアンモニアの幅広い活用を目的とした受入・出荷体制の構築
水素・アンモニアのサプライチェーン
- 九電グループの豊富なゼロエミッション電源を活用した水電解装置等による水素製造、輸送、貯蔵及び水素の利活用を検討し、社会実装に向けた取組みを加速します。
- 具体的には、「分散型地域(内陸部等)」と「産業集積地域(工場・コンビナート・港湾等)」における実証及び両地域の連携等を検討していきます。
水素の社会実装に向けた検討