DXの取組み
九電グループでは、DXの本質を「企業変革」と捉え、デジタル技術やデータを活用した、自社サービス、ビジネスモデル、業務プロセスの抜本的改革を図っています。
DXの推進によって、収益増大、新たな事業創出、業務基盤の強化を目指すとともに、人や組織風土・文化まで変革することで、業務の生産性を向上させ、従業員一人ひとりの働きがいの向上にも貢献することを目指しています。
DX推進の方針
「企業変革」にむけて社員の当事者意識を喚起し、変革への機運を高めることを目的として、「九電グループDXビジョン」および「九電グループDXロードマップ」を策定しています。
デジタルを起点とした業務の抜本的改革や新たなビジネスの展開を更に加速させるため、2022年7月1日に「最高DX責任者」をトップとするDX推進本部を設置しました。
DX推進本部が、社内のITシステムを統括する情報通信本部および各事業部門・グループ会社と連携し、デジタル技術を活用した新規事業創出や業務改革に取り組むことで、九電グループの企業価値向上や持続可能な成長につなげていきます。
各取組みの事例
社内研修の様子
企業における生成AIの活用が進んでおり、九電グループにおいても、労働生産性の向上等を目的として、生成AIの活用を積極的に進めています。
活用にあたっては、基本的な使い方や注意事項を記載した活用ガイドラインを策定するとともに、有効な活用方法などを解説する社内研修や情報発信を実施し、社員の活用スキルの向上を図っています。
また、AI活用のリスクや責任を十分に認識した上で社会的責任を果たしていくことを主眼として、九電グループのAIに対する基本的な姿勢や理念を明確化した「九電グループAI基本方針」を策定しています。
本方針のもと、労働生産性の向上とイノベーションによるお客さまへの新たな価値提供を目指して、AIを最大限活用していきます。
ドローンによるダム点検のイメージ
ダム全体像をAIで解析
異常発生箇所の解析結果
ダム遮水壁点検業務において、ドローンとAI解析技術の活用による業務の高度化・効率化を図っています。
当社独自の自動操縦プログラム(特許第6902763号)でダム遮水壁の壁面を撮影後、株式会社オプティムが開発したAI画像解析技術によって、1センチメートル単位でダム遮水壁のひび、表面保護層の塗布のめくれ等の損傷を確認します。
高精度な設備異常検知によって、約40%の点検コスト削減に成功しました。
今後は社外へのサービス展開も視野に入れるほか、過去データとの比較から経年劣化を予測する技術や、AIによる最適な保修スケジュール管理機能の開発を目指しています。
デジタル技術を活用した新規事業創出・収益拡大に向けて、全社横断で異業種企業(スタートアップ等)との協業・共創に取り組んでいます。
異業種企業との接点機会を創出するため、社外の各種共創イベントへの参画やオープンイノベーションプログラムの自社開催に加え、他企業とコンソーシアムを設立し、福岡・九州で継続的にイノベーションが創出され、スタートアップが輩出されるスタートアップエコシステムの構築に貢献してまいります。
DX推進の中で生まれたサービスとして、スマートメーターで計量された30分単位の使用電力量データと独自の解析技術を活用し、賃貸物件に一人でお住まいのかたの活動状況に変化があった場合に、入居者の親類等にお知らせする不動産会社向けの新サービス「Q-ie まもり」を提供しています。
本サービスは九州域内だけでなく、九州域外にもプラットフォームとして提供し事業を拡大していきます。
<サービス概要>
- スマートメーターで計量された30分単位の使用電力量データを九州電力が取得
(当日分の使用電力量データを翌朝取得) - 1日分の使用電力量データを解析のうえ、通常と異なる傾向があった場合に「異常」と判定
- 「異常」判定が、あらかじめ定めた日数以上続いた場合、入居者へ安否確認の架電を実施
- 安否確認の電話に応答がない場合、明和不動産管理と、あらかじめ設定した入居者の親類等へ、メールやSMS等で通知
データドリブンな企業活動の実現に向けて、生産性向上やビジネス改革を進める「組織内及び横断的なデータ活用」の定着に取組んでいます。
まずはデータ活用の普及・促進に重点的に取り組むため、セルフBI(可視化や簡易分析)、高度分析(予測や最適化)を推進するとともに、従業員一人ひとりが組織内及び横断的なデータ活用ができるようにその体制を強化していきます。
「システム開発内製化に向けた簡易開発基盤の整備」、「データ活用基盤の構築」、「仮想化基盤と社外クラウドサービスの拡大、統制管理基盤の構築」など8テーマ、16施策を設定し、取組みを推進しています。
ICT基盤の構造改革はDXを支える重要な要素であることから、速やかに取組みをおこなっていきます。
DX推進を下支えするため、以下の施策によって、DX人材の育成を進めています。
- DX基礎知識・スキル習得を目的とした研修の実施
全社員を対象に、デジタル技術及びデータを活用し、DXに主体的に取り組むことができる「DXフォロワー」を育成
- 高度な専門知識・スキルを有するDX専門人材の育成
専門知識の習得に留まらず、データの分析・可視化、レポート作成、プロジェクトの運営など、実践的な研修を通じて、全社のDXを牽引できる人材を継続して育成
また、社員一人ひとりの自己研鑽を促すため、DXに係る知識やスキルを向上させる環境を整え、以下の施策を実施しています。
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DXスキルアセスメント:社員のDXスキルや素養を可視化し、自身の能力把握やDXに適した人材を発掘するためのスキルアセスメントを導入
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DX資格の報奨制度:DX推進に係る基礎資格の取得に対する報奨制度を導入
人材育成の一環として、経営層に対し「逆メンター(注)」を導入しています。
(注)若手社員と経営層が、最新のデジタル技術や若者の知識・価値観についてコミュニケーションを図るメンタリング方式
経営層のデジタル理解促進に加え、世代や部門を超えたコミュニケーションの場を設けることによって、風通しの良い組織風土の醸成にも貢献しています。
DX認定制度は、経済産業省が、企業のDXに関する自主的な取組みを促すため、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」であることを確認できた企業を認定する制度です。
DXの本質である「企業変革」に向けた各種取組みが、経産省が定める「デジタル・ガバナンスコード(注)」を満たしていると評価され、DX(デジタル・トランスフォーメーション)認定制度に基づく、「DX認定」を2023年2月1日に取得しました。
(注)企業のDXに関する自主的取組みを促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をとりまとめたもの
今後も、高度かつ最新のデジタル技術やデータを活用して「企業変革」を推進するとともに、「九電グループ経営ビジョン 2030」のもと、持続可能な社会の実現を目指します。