企業情報

  • このリンクをシェア
  • ツイート

1.新設・増強等の開発 

小丸川発電所の開発

小丸川発電所の必要性と開発の経緯

揚水発電所は、停止状態から起動して全出力を発生するまでの時間が非常に短く、また運転中は即座に出力調整を行えることから、需要変動の大きいピーク時や、大型電源のトラブル発生などの緊急時の対応に優れている。
このため、当時揚水発電所の電源構成比目標10%程度を実現するために、九州電力3番目の純揚水発電所として小丸川発電所の開発が計画された。
小丸川発電所は、九州電力で初めて可変速揚水発電システムを導入し、発電運転時は、運転開始時の系統並入および全出力が定速機の約半分の時間でできるとともに、揚水運転時の入力電力の調整を行うことができるなど、需給、系統運用面でも非常に大きな役割を担っている当時最新鋭の発電所であった。
開発にあたっては、199211月から環境影響調査を開始し、1999年2月から建設工事に着工、2007年7月に初号機が、さらに2011年7月までに全号機が運転を開始した。

小丸川発電所の概要

小丸川発電所は、宮崎県の木城町を流れる小丸川の支流大瀬内谷川の最上部に上部ダムを築造して上部調整池とし、小丸川中流部に下部ダムを築造して下部調整池とした。この間の有効落差約646メートルを約2.8キロメートルの水路で連結し、毎秒222立方メートルの水を流下させることにより、地下に設けた発電所で最大出力120万kW(30万kW×4台)の発電を行う純揚水式発電所である。

自然および地域との共生

小丸川発電所は、宮崎県の中部・尾鈴山山系の南西部に位置し、その周辺は、地理的、気候的特性を反映して、豊かな自然環境に恵まれている。発電所設置地点の一部及びその周辺地域は、尾鈴県立自然公園や石河内鳥獣保護区に指定されており、発電所レイアウト検討や建設工事の実施にあたっては、自然環境との共生に努めながら進めてきた。
下部ダム近傍においては、生態系の頂点に位置するクマタカ(絶滅危惧種/環境省レッドデータブック)の生息が確認されており、ダム位置の選定にあたっては、営巣地から離れた場所となるよう配慮するとともに、工事中はクマタカへの影響を極力小さくするよう、繁殖期間中の延べ14か月は掘削工事を休止するなどの保全対策及び生態調査を継続して実施した。この結果、工事期間中と工事完了後にそれぞれ繁殖が確認でき、保全対策の効果が検証された。
上部調整池周辺においては、コウヤマキ群落(宮崎県特定植物群落)が生育しており、自然植生の復元を目指し、他の樹木、草木を含めてより自然に近い配置で移植、植栽をおこなった。
工事で使用するコンクリートの材料である骨材については、地下発電所の掘削によって発生した岩塊(掘削ずり)を利用し、工事にともなって発生する産業廃棄物も極力現場内で有効活用するなど、環境負荷低減に努めた。
これらの環境保全対策をより体系的に実施するため、建設所内で環境マネジメントシステムを構築し、2001年にISO14001の認証を社内で2例目に取得した。2006年には、自然環境保全への取組みが社外でも評価され、土木学会賞環境賞を受賞した。
また、地域に根ざし、地元の方々に親しまれ続ける発電所を目指し、木城町との十分な協議も踏まえて、発電所展示館(ピノッQパーク)や、工事用土捨場の跡地整備などの発電所周辺の整備をおこなった。

土木関係設備の概要と技術的特徴

上部調整池での「アスファルト全面表面遮水壁型」採用

上部ダム地点では、標高750~810メートルの大きな山体の頂上に、大瀬内ダム(主ダム)およびかなすみダム(副ダム)の2つのロックフィルダムを築造し、有効貯水容量560万立方メートルの調整池を形成している。調整池の遮水方法には、確実な遮水が期待できるアスファルト全面遮水壁型を採用しており、その舗設面積は約30万平方メートルに及ぶ。これは同タイプの調整池の舗設面積としては国内最大のものである。

地下発電所における大規模地下空洞

地下発電所は、地下約400メートルの堅硬な岩盤中に幅24メートル、高さ48メートル、長さ188メートル、掘削容積約16万立方メートルの大規模空洞を掘削して建設しており、その断面形状は、最新の岩盤力学や設計技術を駆使し、空洞の安定性が高く掘削量も少ない、弾頭形を採用している。また、上部ダムから発電所を結ぶ水圧鉄管には、内圧の一部を鉄管周辺の岩盤に負担させる設計とすることや、国内2例目となる高張力鋼を採用して管厚を薄くすることで、コストダウンを図っている。

下部ダムにおける大規模放流設備の導入

下部ダム地点では、小丸川中流域の標高80~130メートルの地点にコンクリート重力式ダムである石河内ダムを築造し、上部調整池同様に有効貯水容量560万立方メートルの調整池を形成している。ダム地点の流域面積は329平方キロメートルと大きく、設計洪水量は4400m3/sに及ぶため、降雨による増水時に放流するための洪水吐ゲートは、幅10メートル、高さ16メートルのクレストゲート門を設置しており、揚水発電所の調整池としては類を見ないほど大規模なものである。

電気関係設備の概要と技術的特徴

可変速揚水発電システムの導入

九州電力の既設揚水発電所は一定回転速度でしか運転できないため、揚水運転時に入力電力は変化しない。これに対し、小丸川発電所の可変速揚水発電システムは、発電電動機の回転速度制御を行い、揚水量を変化させることで、入力電力を最大11万kWの幅(23~34万kW)で調整することができる。

ポンプ水車の回転速度600min-1の採用

地下発電所建屋の掘削量の削減、ならびに建屋寸法の縮小化を行うなどの建設コスト低減を図るために、ポンプ水車、発電電動機の小型化、高速度化をおこなった。設計にあたり、課題であったポンプ水車の高速度化によって発生するキャビテーションの増大、ランナ(羽根車)に作用する応力増大およびランナ加振力の増大などを、流れ解析等の最新技術を用いて解明し、30万kW級ポンプ水車の回転速度としては、600min-1を世界で初めて採用した。

発電起動時間の短縮

発電起動指令から全出力到達までの所要時間は、入口弁開時間、異常振動が発生しない発電機昇速限界スピード、可変速機能による同期調整時間の短縮などの技術開発に取組み、九州電力の既設揚水発電所における5分から、半分の2分30秒へと大幅な短縮を図った。

嘉瀬川発電所の営業運転開始

当社は、佐賀県佐賀市において嘉瀬川発電所の建設を進め、電気事業法に基づく使用前自主検査を終了したことから、201216日、営業運転を開始した。
本発電所は、水資源の有効活用を図る目的で、国土交通省嘉瀬川ダム事業に発電参画した最大出力2,800kWの水力発電所で、年間の発電電力量は約1,660万kWhを想定しており、これは、一般家庭約5,000世帯が1年間に使用する電力量に相当するものであった。

上椎葉維持流量発電所の営業運転開始

当社は、宮崎県東臼杵郡椎葉村において上椎葉維持流量発電所の建設を進め、電気事業法に基づく使用前自主検査を終了したことから、2013日、営業運転を開始した。
本発電所は、水資源の有効活用を図るため、未利用エネルギーであるダムからの河川維持流量を利用した最大出力330kWの水力発電所で、年間の発電電力量は約240万kWhを想定しており、これは一般家庭約600世帯が1年間に使用する電力量に相当するものであった。

一ツ瀬維持流量発電所の営業運転開始

当社は、宮崎県西都市において一ツ瀬維持流量発電所の建設を進め、電気事業法に基づく使用前自主検査を終了したことから、20131025日、営業運転を開始した。
本発電所は、水資源の有効活用を図るため、未利用エネルギーであるダムからの河川維持流量を利用した最大出力330kWの水力発電所で、年間の発電電力量は約220万kWhを想定しており、これは一般家庭約600世帯が1年間に使用する電力量に相当するものであった。

竜宮滝発電所の営業運転開始

当社は、熊本県上益城郡山都町において竜宮滝発電所の建設を進め、電気事業法に基づく使用前自主検査を終了したことから、201526日、営業運転を開始した。
本発電所は、水資源の有効活用を図るため、緑川水系大矢川から取水するかんがい用水路(大矢川水利組合管理)の遊休落差約20メートルを利用した最大出力200kWの水力発電所で、年間の発電電力量は約170万kWhを想定しており、これは一般家庭約500世帯が年間に使用する電力量に相当するものであった。
また、本地点は、町の観光資源である竜宮滝(矢部四十八滝のひとつ)に隣接していることから、関係自治体や地元関係者と協議を重ね、発電所工作物の形状や色彩にも配慮した。

龍門滝水力発電所の営業運転開始

西技工業は、鹿児島県姶良市において、2014年3月から龍門滝水力発電所の建設を進め、2015年6月24日、営業運転を開始した。
本発電所は、旧春日寺発電所(昭和初期に稼働)地点で、龍門滝などを形成する独特の大地でできた落差や既設農業用水路を有効活用した最大出力154kWの水力発電所で、年間発電電力量は一般家庭360世帯相当の約110万kWhであった。

中木庭ダム発電所の運転開始

当社と西技工業、九電工は3社連合体(代表者:西技工業)で佐賀県が公募した「中木庭ダム小水力発電事業(ダムの放流水を活用して民間事業者が水力発電を行う事業)」に応募して、201211月に事業者の特定を受けた。
本発電所は、最大出力が196kW、年間の発電電力量は約125万kWhを想定しており、2015年8月に工事着工し、2016年4月1日に運転を開始した。

名音川発電所の営業運転開始

当社は、鹿児島県大島郡大和村において、名音川発電所の再開発工事を進め、電気事業法に基づく使用前自主検査を終了したことから、2016日、営業運転を開始した。
本工事は、1951年に運転を開始した名音発電所(最大出力65kW)の高経年化対策並びに未利用水の有効活用を目的とした再開発工事であり、最大使用水量の増加により、最大出力が370kWに増加した。また、年間の発電電力量は約200万kWhを想定しており、これは一般家庭約600世帯が1年間に使用する電力量に相当するものであった。

鴨猪(かもしし)水力発電所の営業運転開始

九電みらいエナジーは、熊本県上益城郡山都町において、2016月から鴨猪(かもしし)水力発電所の建設を進め、2018年9月19日、営業運転を開始した。
本発電所は、山都町菅地区を流れる緑川水系鴨猪川から取水するかんがい用水路(矢部土地改良区様所有)の一部と未利用落差約270メートルの山都町の豊富な水資源を有効活用した最大出力1,990kWの水力発電所で、年間発電電力量は一般家庭3,200世帯相当の約960万kWhであった。
本地点は、地元のかんがい用水路の一部を利用することや矢部周辺県立自然公園内に位置することから、関係自治体や地元関係者と協議を重ね、かんがい用水路の適切な運用とともに道路に水圧管を埋設することで、発電所の周辺環境に配慮した。

甲佐発電所の営業運転開始

当社は、熊本県上益城郡甲佐町において、甲佐発電所の再開発工事を進め、電気事業法に基づく使用前自主検査を終了したことから、2019年8月2日、営業運転を開始した。
本工事は、1951年に運転を開始した甲佐発電所(最大出力3,900kW)の高経年化対策並びに未利用水の有効活用を目的とした再開発工事であり、新たな導水路トンネルの増設に伴う最大使用水量の増加により、最大出力が7,200kWに増加した。また、年間の発電電力量は約3,000万kWhを想定しており、これは一般家庭約10,000世帯が年間に使用する電力量に相当するものであった。

稲葉発電所の新設工事

当社と西技工業、九電みらいエナジー、九電工は4社連合体(代表者:西技工業)で大分県が公募した「稲葉ダム小水力発電事業(ダムの放流水を活用して民間事業者が水力発電を行う事業)」に応募して、2017年1月に事業者の特定を受けた。
本発電所は、最大出力が420kW、年間の発電電力量は約256万kWhを想定しており、2019年8月に工事着工し、2021年3月23日に運転を開始した。

新竹田発電所の新設工事

竹田発電所は、運転開始から64年が経過し、施設の老朽化が進行していたことから、20191028日に同発電所を廃止し、「新竹田発電所」を新設する計画を策定した。その後、工事に向けた準備が整ったため、同年1029日から、新竹田発電所の新設工事を開始した。
本工事は、水車・発電機、導水路等の高経年化対策並びに未利用水の有効活用を目的とした再開発工事であり、最大使用水量の増量及び発電機の効率向上により、最大出力と発電電力量の増加を図るもので、同工事と並行して、竹田調整池堰の改造工事も実施する予定である。

塚原発電所の営業運転開始

当社は、宮崎県東臼杵郡諸塚村において、2014年5月から塚原発電所の更新工事(1号機:出力33,300kW、2号機:出力33,300kW)を進め、1号機の使用前自主検査を終了したことから、2020年4月15日、営業運転を開始した。また、同年5月28日には、2号機について使用前自主検査を終了したことから、営業運転を開始した。
1938年に運転開始した塚原発電所の水車発電機及び建屋などの高経年化対策を目的とした本工事では、水車発電機を4台から2台に統合し、過去の浸水被害を踏まえ、被害を受けにくい隣接地点に発電所を設置した。また、今回の更新工事では、最新の水車発電機の導入により、発電効率が向上したため、旧発電所と比較して合計最大出力が4,000kW増加し、合計最大出力は67,050kWとなった。

黒川第一発電所の復旧

黒川第一発電所は、当社前身の熊本電気が1914年に運転を開始して以来、長年にわたり地元の協力を得ながら発電を続け、電気をお届けしてきたが、2016月の熊本地震により、甚大な被害を受け、以降、発電できない状況が続いた。
しかし、水力発電は出力が安定した貴重な再生可能エネルギーであり、国産エネルギーとして有効活用を図っていく必要があることから、201812月、発電所復旧の可能性に関する調査を開始した。201922日には、社外有識者を中心とした「黒川第一発電所の復旧可能性に関する評価委員会」を設置し、発電所復旧の可能性について検討を進めた。20191021日、同委員会から、ハード対策とソフト対策を組み合わせることで、安心・安全な発電所の復旧は可能との評価を得た。その後、地元の意見や経済性等を踏まえ、更に検討を進めた結果、発電所を復旧する方針を固め、2020年5月19日、発電所の復旧計画の概要を公表した。今後は、2026年度の完成を目指し、設計・工事等を進めることとしている。