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6.原子力コミュニケーション活動

原子力発電所の運転にあたっては、自主的・継続的な安全性・信頼性向上に不断に取り組むとともに、その実施状況等について地域の皆さまと対話を重ね、ご理解やご安心をいただくこと、また、頂戴したお声をしっかりと業務に反映させること等を通じて、信頼関係を構築していくことが何よりも重要である。
そのため、原子力発電所の安全対策等について、お客さまや地域社会の目線に立って、積極的かつわかりやすい情報公開に努めるとともに、訪問活動や見学会等の様々な機会を通して、フェイス・トゥ・フェイスを中心とした原子力コミュニケーション活動を全社で展開している。

原子力コミュニケーション活動の推進

原子力コミュニケーション活動体制の構築

原子力の広報活動については、広報部門が中心となり、副社長を委員長とする原子力広報会議を毎年開催し、基本方針および具体的施策などを審議のうえ、全社一体となった活動を展開してきた。
その後、東日本大震災や経済産業省主催の県民説明番組への意見投稿呼びかけ問題を踏まえ、「当社の信頼回復に向けた取組み」や「経営環境の変化に柔軟に対応できる業務運営体制の構築」の観点から、2012年7月1日、原子力業務の透明性向上を図るとともに、原子力情報に対するニーズを踏まえた的確な自治体・地域対応や情報公開を行うことを目的として、「原子力コミュニケーション本部」を設置した。そして、同時期に原子力・火力部門を統合して設置された「発電本部」が原子力発電所の運転や技術的対応に専念し、原子力コミュニケーション本部が信頼再構築に向けたコミュニケーションを実施することとなった。
その後、2017年4月1日、原子力コミュニケーション本部と立地本部が有する地域コミュニケーション・情報発信機能を一元化し、全社の原子力に係るコミュニケーション活動を強力に推し進めることを目的に「立地コミュニケーション本部」を設置し、「広報部門」「原子力発電部門」等と連携を図りながら、併せて、川内原子力総合事務所の機能見直しも行い、立地地域をはじめ九州全域の皆さまとのコミュニケーション活動を全社大で展開している。
また、2018年7月1日には、玄海原子力発電所の廃止措置や使用済燃料対策等の諸課題について、地域社会に寄り添い、自治体や地域の皆さまの「安心」につながるコミュニケーション体制を強化するため、「玄海原子力総合事務所」を設置した。

原子力コミュニケーション活動方針の策定

2017年7月、立地コミュニケーション本部の設置に伴い、コミュニケーション活動をより効果的なものとするため、社長を委員長とする「原子力コミュニケーション会議」を毎年開催し、各地の活動状況や評価、お客さまの声、社外有識者等からの提言、各種アンケート調査等を踏まえ、全社方針としての「原子力事業に係るコミュニケーション活動方針」を策定し、同方針に基づいた活動を全社一体となって展開している。

リスクコミュニケーションへの取組み

活動においては、地域の皆さまに「安全である」「安心できる」と感じていただけるよう、「リスクコミュニケーション(注)」の考え方を基本に据えている。

(注)「『原子力リスクはゼロにならない』との前提に立ち、地域の皆さまの不安や意見などを丁寧にお聴きし、お聴きした声や九州電力の取組みについて共に考えることで、お互いの認識の違いや共通点を見出しながら、信頼関係を構築していくコミュニケーション(当社における定義)」

地域の皆さまの理解促進等に向けた主な活動

訪問等による対話の実施

九州電力は、原子力関連情報の積極的な公開・発信に加え、訪問等によるフェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーション活動を実施しており、特に、立地地域については、玄海、川内それぞれに設置した総合事務所が中心となり、原子力発電所や近隣の営業所等とも連携しながら、地区集会等でのご説明、地域イベントへの積極的な参画等、様々な機会を通じた対話を実施している。

原子力発電所見学会の実施

原子力発電に対する理解促進を図るうえで、お客さまに原子力発電所を実際に見ていただくことが効果的であるという考えのもと、九州電力では全社をあげて原子力発電所見学会を積極的に実施し、ピークの2000年度には見学者数が16万3000人に達した。しかし、2001年9月の米国における同時多発テロ以降、原子力発電所見学会に際しては、安全対策上、厳重な身元確認、持ち込み荷物の制限を行うことが義務づけられたほか、見学ルートが制限され、発電所建屋内の見学が事実上不可能な状態となった。このため、現在は、オピニオンリーダー等を中心に見学会を実施しており、一方で、次世代層及び女性を対象に、各所の情勢に応じたさまざまな独自活動を、支店広報グループを中心に実施している。
このような中、2011年3月の東日本大震災に伴い、東京電力福島第一原子力発電所事故が発生。発電所見学会の中止等の影響により、見学者数は減少傾向となった。また、2020年には世界で大流行した新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、見学会を長期にわたり中止した。

ホームページコンテンツ

お客さまが気軽にエネルギーや原子力発電に関する情報を検索できるよう、2009年4月に九州電力ホームページにエネルギー問題や原子力発電に関する現状やデータなどを紹介する「なるほど エネルギー」の掲載を開始した。また、2010年7月には、エネルギーセキュリティや電源多様化への取り組みなどを紹介するオリジナルストーリー「銀河鉄道999‐時空を超えたエネルギーの旅‐」を掲載した。
さらに、2018年4月には、身近な食材を切り口にして、エネルギーミックスへの理解につながる「エネルギー安定供給」「経済効率性の向上」「環境への適合」の観点についてイラストを用いて分かりやすく解説した「エネなび」を掲載した。

パンフレットの制作

九州電力の原子力発電に関するさまざまな取組みへの理解促進のため、2007年からパンフレット「原子力発電所についてご説明いたします」シリーズを制作した。これまでに「地震対策編」「環境編」「放射線と放射能編」「必要性編」「安全性編」をテーマに取り上げ、訪問活動などで活用してきた。
また、玄海、川内の原子力発電所ごとに「新規制基準を踏まえた原子力発電所の安全対策」「使用済燃料貯蔵対策」など、その時々の発電所の状況等に応じた資料を作成している。作成にあたっては、対話活動などを通して頂いたご質問やご意見等を踏まえ、わかりやすいと感じていただけるよう内容や表現の改善に努めるなどし、コミュニケーション活動の実効性向上に取り組んでいる。
なお、お客さまが不安に思われている事項の中で、特にお客さまにお伝えしたい内容として、2017年から「教えて、エネルギー」シリーズとして「火山のメカニズムと原子力発電所への影響」「地震のメカニズムと原子力発電所への影響」「放射線のメカニズムと人体への影響」「日本のエネルギー事情」をテーマに制作し、訪問活動などで活用している。

プルサーマル実施に向けた理解活動

玄海原子力発電所3号機でのプルサーマル計画を進めるにあたっては、プルサーマルの必要性・安全性について、地元のご理解が重要であり、不安や疑問に対し、ていねいに分かりやすく説明するとともに、積極的な情報公開に努める必要がある。
2004年5月28日、九州電力は、佐賀県、玄海町へ安全協定に基づく事前了解願いを提出し、それ以降、地元での説明会をはじめ、新聞、テレビCMなどのマスメディアを活用した広告や九州電力の取組みをホームページへ掲載するなどの広報活動を実施してきた。
2005年2月20日には、佐賀県玄海町で「プルサーマル公開討論会」を開催し、2006年3月26日、玄海町および佐賀県からプルサーマルの事前了解を受領したが、その後も記者発表、現場公開など積極的な情報公開や分かりやすい説明などの広報活動を継続的におこなってきた。
2009年12月2日のプルサーマル開始後も広報活動を継続して展開している。具体的には、2005年1月から九州電力の原子力CMに起用した宇宙飛行士の毛利衛氏のテレビ・ラジオCMや眞部社長と毛利氏との対談広告(2008年1月26日)、また、佐賀県各地で専門家を招いてのイベントや講演会を開催するなどしている。

再稼働に向けた理解活動

東日本大震災後、原子力発電所の再稼働にあたっては、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準の遵守にとどまらず、当社の自主的・継続的安全性向上への不断の取組みについて、地域の皆さまに丁寧にご説明し、安心・信頼していただくことが必要であった。
2013年、原子力発電所の安全性に対する新たな審査基準「新規制基準」の策定(公布2013年6月19日、施行2013年7月18日)にあわせ、当社で実施してきた安全対策に関する理解活動を強化することとし、全社一丸の取組みを基本に草の根のコミュニケーション活動を実施した。
具体的には、原子力発電所の安全対策や新規制基準への適合性審査の状況等について、川内、玄海原子力発電所の周辺を中心に、①各自治会長等への訪問活動、②地元議会・地元会議体(原子力安全対策連絡協議会等)でのご説明、③発電所での安全対策や訓練状況の見学会、マスコミへの公開など、あらゆる機会をとらえた活動をおこなった。
また、九州全域のお客さまに対しても、各事業所で訪問等による対話活動や見学会、メディア等を活用した情報発信をおこなった。

エネルギーミックスに関する理解活動   

原子力の必要性を含むエネルギー問題について、より多くのかたが関心を持ち、ご理解を深めていただけるよう、各電源の特徴を踏まえてバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の重要性について、各事業所が実施する対話活動や見学会、次世代層向けの出前授業や、WEBやメディアを活用した情報発信などにも積極的に取り組んでいる。

社内啓発の推進

原子力PAスキルアップ研修

原子力発電所見学会をより効果的なものとすることを目的に、原子力体験研修に代わり、引率する社員の話し方のスキル向上や実際の発電所見学によるエネルギー・原子力発電に関する説明能力向上を図る原子力PA(Public Acceptance 国民的、社会的な合意形成を図る活動)スキルアップ研修を2004年度から開始した。2009年度に終了するまでに、314人が受講し、その後の原子力広報活動に役立てた。

エネルギーセミナー・エネルギー講演会

経営層をはじめ店所長、本店部長などを対象に社外の著名人や有識者などを講師として招き、原子力発電をはじめとするエネルギー・地球環境問題などのトピックスをタイムリーに学ぶエネルギーセミナーを2008年度から開催し、意識高揚と知識向上を図っている。なお、2016年度からは、エネルギー講演会と名称を変更して実施している。

リスクコミュニケーション研修

リスクコミュニケーションの考え方や対話手法の社内定着を図るため、経営層向け講演会のほか、対話活動の従事者を中心とした研修や、社内ポータルを活用した全社員への定期的な情報配信などを実施している。

支店広報グループによる職場勉強会の実施

支店広報グループの技術系管理職等が講師となり、お客さまと接する機会が多い事業所の社員を対象に職場勉強会を実施し、九州電力の原子力発電の取り組みなどについて社員の知識向上を図っている。