企業情報

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2.再生可能エネルギーの最大限の活用

再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答保留

地球温暖化対策として優れた国産エネルギーである再生可能エネルギーを普及拡大するため、2012年7月、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が開始された。制度の内容については、再生可能エネルギーの発電事業者に対して、固定価格での長期買取を保証することによって事業収益の予見可能性を高め、参入リスクを低減させることで新たな再生可能エネルギー市場を創出し、市場拡大に伴うコスト削減により再生可能エネルギーの中期的な自立を促すものである。
FIT開始以降、当社管内においては、太陽光を中心として再生可能エネルギー発電設備の導入が急速に進んだ。
こうした中、接続申込が全量接続された場合に、冷暖房の使用が少ない春や秋の晴天時などに、昼間の消費電力を太陽光・風力による発電電力が上回り、電力の需要と供給のバランスが崩れ、電力の安定供給を損ねる事態が予想された。
これらの状況を踏まえ、再生可能エネルギーをどこまで受け入れることができるかの見極めが喫緊の課題となったことから、離島においては2014年7月26日、九州本土は2014年9月25日に、既に申込みをしている事業者及び今後新規申込みをする事業者について、申込みに対する当社の回答を保留した。10月には、事業者向け説明会を九州各地の支社で開催し、回答保留に至った経緯や今後の対応などの説明をおこなった。合計で6,420名が来場し、多数の意見・質問が寄せられた。
その後、国より再生可能エネルギー発電設備接続可能量の検証が行われ、確定するとともに、2015年1月26日の「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則」改正により、接続可能量を既に上回っている又は上回ると見込まれる電力会社が指定電気事業者に指定された場合、年間30日を超えた無補償での出力制御に事業者が協力することを前提に接続を行うこととなった。
当社では、太陽光の接続申込量が接続可能量を既に上回っていたことから、2014年12月18日、固定価格買取制度に基づき、太陽光発電の指定電気事業者に指定され、これらの運用見直し及び指定電気事業者への指定を踏まえ、再生可能エネルギーの接続申込みについて、順次回答を再開した。
なお、風力については、2015年11月10日に、国の系統ワーキンググループにおいて当社の接続可能量が100万kWから180万kWへ見直された。2017年2月末には風力の接続申込量(140万kW)が接続検討回答済の50万kWを含めて190万kWとなり、接続可能量を超過する可能性が出てきたことから、3月7日、風力発電の指定電気事業者に指定された。

優先給電ルールの運用

太陽光を中心とした再生可能エネルギーの導入が急速に進む中、2016月、供給力が需要を上回る場合の対応として、火力やバイオマスなどの出力を抑制する順番等を定めた「優先給電ルール」が、国の審議会において整備された。その内容は、九州全体で再生可能エネルギーを含めた供給力が需要を上回る際に、まず、火力の出力抑制や揚水発電のくみ上げ運転による需要創出、地域間連系線を活用した他電力エリアへの送電を行い、それでもなお供給力が需要を上回る場合には、バイオマスの出力制御の後に、太陽光・風力の出力制御を行うというものであった。当時、既に離島において出力制御をおこなっていたが、九州本土においても出力制御が発生する場合には、本ルールに基づいて運用することとなった。20181013日、九州本土で初の出力制御を実施した。以後、特に春・秋の需要の少ない時期を中心に出力制御を行うこととなった。

実証事業

離島における再生可能エネルギー導入拡大に向けた蓄電池制御実証事業

離島では、系統規模が九州本土と比べて小さいため、出力変動が大きい太陽光・風力が連系されると、系統周波数変動が大きくなり、系統の安定性に影響を与えやすくなるという特徴があった。
当社は、離島においても太陽光・風力の導入拡大を図りつつ、電力の安定供給を維持するため、201318日に国の補助事業の採択を受け、長崎県の壱岐において蓄電池実証試験を開始するとともに、29日に新たな国の補助事業の採択を受け、201413日から、対馬・種子島・奄美大島において合計蓄電池容量 8,500kWの「離島における再生可能エネルギー導入拡大に向けた蓄電池制御実証事業」を実施した。

大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業

電力の安定供給を前提に、再生可能エネルギーを最大限受け入れる取組みとして、201522日に国の「大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業」を受託、2016日に世界最大級の大容量蓄電システムを備えた豊前蓄電池変電所を新設した。その後の実証試験では、実際に太陽光発電の出力に応じて蓄電池の充放電を行い、需給バランス改善に活用するとともに、大容量蓄電システムの効率的な運用方法などの実証試験を実施した。

電力系統出力変動対応技術研究開発事業

九州本土の需要と供給のバランスを確保する取組みの1つとして、201623日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「電力系統出力変動対応技術研究開発事業/再生可能エネルギー連系拡大対策高度化プロジェクト」を受託した。2016年度から2018年度にかけ、同委託事業において検証・評価を行い出力制御システムの有効性を確認し、出力制御技術を高度化した。

(注)今回開発した出力制御システムについて、2020年9月、電気科学技術奨励賞を受賞

関門連系線の再生可能エネルギー送電可能量拡大に向けた技術開発事業

201828日、国の「再生可能エネルギー出力制御量低減のための技術開発事業」を受託し、九州エリアから他エリアへの送電量を増やすことにより、再生可能エネルギーの出力制御量を低減することを目的として、太陽光発電等の自然変動電源も制御対象とした「転送遮断システム」を開発し、その実効性の検証をおこなった。その結果、九州エリアから他エリアへの再エネ送電可能量を最大で30kW程度拡大することが可能となり、再生可能エネルギーの出力制御量を低減することが確認できたことから、2019日、「転送遮断システム」を関門連系線の再生可能エネルギー送電可能量拡大に活用することとした。

(注)今回開発した転送遮断システムについて、2020年9月、電気科学技術奨励賞を受賞

蓄電池を活用したエネルギーマネジメントサービスの実証実験

当社は三井物産とともに、FIT制度の買取期間満了を見据え、家庭用太陽光発電設備を所有するお客さまに対し、蓄電池を用いて電力の自家消費を促進することにより電気料金を低減させるサービスの実証実験を2019年に開始した。
また、実証実験では、電気料金低減効果の確認に加え、VPP(バーチャルパワープラント)等の技術的知見獲得を目的に、米国Sunverge社製のシステムを活用した蓄電池の群制御動作実験も併せておこなった。将来的には、大規模な蓄電池群制御の実現により、需給調整市場での活用や電力系統安定化等の新たな事業やサービスの展開を目指すこととした。
今後の電力供給システムは、従来の大規模電源からVPP等の分散型電源へ変化していくことが想定されることから、両社は今回の実証実験を通じて、新たな事業やサービスの創出を行うための知見を獲得し、お客さまへ新たな価値提供を行うためのイノベーションを積極的に推進することとしている。

FIT制度の買取期間満了後の買取り

2009年11月の「太陽光発電の余剰電力買取制度」の開始、その後、2012月に対象を太陽光発電以外の再生可能エネルギーにも拡げた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)開始により、当社は再生可能エネルギーで発電された電気を国が定める価格で一定期間購入していたが、201911月以降、FIT制度に基づく買取期間が順次満了することになった。
これを受け、当社では、持続可能な社会及び低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーを最大限受け入れていく観点から、買取期間が満了した再生可能エネルギーの電気を新たなプランで引き続き購入することとし、2019日、買取価格等の契約条件を決定した。また、太陽光で発電した電気の自家消費拡大を検討しているお客さまに対し、蓄電池や太陽光発電システム連携型エコキュート設置会社の紹介などをおこなった。

更なる活用に向けた対応

当社として再エネを活用していく観点から、FITによる買取期間が終了した卒FIT電源や蓄電池、EV等、分散型エネルギーリソースの統合制御技術を確立し、アグリゲーション・ビジネスの展開も図ることとしている。

系統用蓄電池を活用した太陽光発電の出力制御量低減に向けた共同事業の検討開始

2022年6月、当社、NTTアノードエナジー及び三菱商事は、再生可能エネルギーの更なる活用及び導入促進に向けて、系統用蓄電池を活用して太陽光発電の出力制御量低減に貢献する共同事業の検討を開始した。各社が持つ経営資源やノウハウ等を活用して共同で取り組み、系統用蓄電池を用いて太陽光発電の出力制御量を低減させるとともに各種電力市場での取引等でマルチユースする事業モデルの構築を目指すとしている。

系統用蓄電池「大牟田蓄電所」の運用開始

2022年8月、当社とNExT-e Solutionsは、福岡県大牟田市において、電力系統に接続した系統用蓄電池「大牟田蓄電所」(出力1,000kW、蓄電容量3,000kWh)の運用を開始した。当社は本蓄電所を運用して再エネの有効活用や電力の安定供給に貢献していく。また、本蓄電所の蓄電池は、電動フォークリフトで使用した蓄電池を再利用しており、資源の有効活用に資する取り組みにもなっている。

木質バイオマス発電所燃焼灰の再資源化に向けて土質改良材の試作に成功

2022年10月、九州電力、大和ハウスグループのフジタの両社は、近年増加傾向にある木質バイオマス発電所から発生する燃焼灰の再資源化に向けて、土質改良材の試作に成功したと発表。試作では、燃焼灰に含まれる重金属などに対し、土質環境基準を満たす処理を行ったうえで、水を多く含んだ軟らかい土と混合した結果、化学反応を起こさず水を吸収し、脱水した一般的な土になることが確認され、土質改良に効果的であることを把握。工事現場における土質不良箇所への適用や、環境に優しいリサイクル材としての活用が期待される。