1.需給ひっ迫への対応
初の数値目標を踏まえた節電要請
東京電力福島第一原子力発電所事故以降、当社の原子力発電所が順次運転を停止し、2011年12月の玄海4号機の定期検査開始により、管内の全ての原子力発電所が運転停止したことから、供給力が不足し、冬の電力需給が極めて厳しい状況となることが予想された。
このため、2011年12月1日から2012年3月30日までの平日、お客さまに対し、生活や経済活動に支障のない範囲での節電をお願いするとともに、特に気温が低く冬季最大電力需要が発生する可能性の高い12月26日から2月3日までの平日8時から21時については、最大電力の5%以上を目標とした節電へのご協力のお願いをおこなった。
新大分発電所緊急停止
2012年2月3日3時55分、新大分発電所に燃料を供給する大分エル・エヌ・ジー株式会社において、燃料の流量を調整する弁を駆動するための空気を送り込む配管が寒波の影響により凍結したことで、発電所に燃料を供給できなくなり、全てのユニットが緊急停止した。
全ての原子力発電所が運転停止していた中、このトラブルにより供給力不足のリスクが急速に高まったことから、緊急需給対策総本部を設置し、対応にあたった。具体的には、管内の自社及び他社電源を最大限確保するとともに、他電力6社から計240万kWの応援融通、緊急時の需要調整を予め契約しているお客さま46社に要請して計約30万kW分を抑制するなど、対策をおこなった。その後、各ユニットが順次運転再開したことから、9時には予備率3.3%を確保、計画停電を回避することができた。
セーフティネットとしての計画停電の準備
2012年5月8日、夏場の電力需給状況が大変厳しくなるとの見通しであったことから、お客さまに7月2日から9月7日の平日9時から20時において、猛暑だった2010年度の使用最大電力から10%程度以上の節電へのご協力のお願いをおこなった。
こうした中、大規模な電源脱落など、不測の事態により需給ひっ迫(予備率3%未満)が予想される場合には、国や自治体と連携をとりながら、報道機関やホームページ等を通じた更なる節電のお願いに加え、他電力からの緊急的な応援融通の受電や、予め契約しているお客さまの負荷調整の要請など、需給両面からのあらゆる対策を実施し、需給ひっ迫による停電を回避することとしていた。しかし、それでもなお、供給力不足が改善されない場合の大規模停電を避けるため、最終的な備え(セーフティネット)としての計画停電の準備について、2012年6月22日、公表した。
計画停電の具体的手順として、まず、計画停電の対象時間帯を8時30分から21時まで、停電時間単位を2時間程度とし、6つの時間帯に区分した。また、停電エリアについては九州エリアを2つのエリアに分割し、各エリアをそれぞれ30のサブグループに細分化した。10のサブグループごとに1つのグループにまとめ、それぞれを6分割した時間帯に当てはめた。毎日の具体的な割り当ては「月間カレンダー」で示した。実際に停電する際は、グループに含まれる10のサブグループ全てを対象にするのではなく、不足する供給力に応じて停電するグループの数を変えることとした。
供給予備率が3%を切り、計画停電の可能性がある場合には、前日午後6時頃までに、停電する時間帯とサブグループの数をホームページや電子メールなどで公表することとした。また、当日、西日本の電力会社全体の予備率が1%程度に低下するまで、当社に電力を融通しても供給力が足りない場合は、計画停電の実施を実施の2時間前までに公表することとした。さらに、火力発電所のトラブルなど不測の事態が発生した場合は、急きょ停電を実施することとした。
救命救急センターなどの医療機関や自衛隊などの国の安全上重要な施設、市民サービスに大きな影響がある県庁舎や市町村役場は計画停電の対象外とした。また、技術的に可能な範囲で鉄道・航空、金融システム等についても電力供給するとともに、原子力発電所周辺30km圏内の地域も安全上の理由から対象外とした。
これらの方針を踏まえ、当社では、計画停電による影響をできる限り緩和するため、自治体・警察や医療機関等との連絡体制を確立するとともに、自家用発電機を保有する施設への自家用発電機活用の依頼、小型発電機の貸し出し、在宅等で人工呼吸器等の医療機器を使用する患者や一人暮らしの高齢者といった生活弱者への対策などをおこなった。また、需給ひっ迫対応を随時実施し、計画停電を実施する場合の手順を確認し、不測の事態に備えた。
その結果、2012年夏の最大電力需要は、お客さまの節電への協力などもあり、期間を通して、気温の影響を除くと、2010年夏に比べ10%程度低く推移するとともに、供給面においても、他電力からの応援融通の受電や取引市場からの電力調達など、追加供給力確保に向けた取組みをおこなったことから、電力供給に大きな支障は生じず、期間中に計画停電を一度も発動することなく終了した。
2022年度夏季節電要請 需給ひっ迫対策総本部の設置
2022年度夏季の九州エリアの電力需給は、猛暑の場合でも、安定供給に最低限必要とされる供給予備率3%を何とか確保できる見通しではあるものの、厳しい需給状況が予想された。また、全国の電力需給も非常に厳しい見通しとなるとともに、ウクライナ情勢の影響によりこれまで以上に燃料調達リスクが高まったことから、九州電力及び九州電力送配電は、厳しい需給状況を踏まえ、万一の場合にも迅速かつ的確に対応するため、7月1日に「需給ひっ迫対策総本部」を設置した。
「国の節電促進事業」への採択
2022年冬の厳しい需給見通しを受け、お客さまに広く節電にご協力いただくため、経済産業省資源エネルギー庁の「令和4年度電気利用効率化促進対策事業に申請し、10月3日、採択された。採択を受け、ご家庭などの低圧のお客さまを対象とした「ピーク時節電コース」と「月間節電コース」の2種類の節電プログラムを実施。その第一弾として、10月7日から「ピーク時節電コース」の参加受付を開始した。2022年11月、「月間節電コース」の内容や、プログラムを通じ節電にご協力いただいた際の特典(達成特典)等について詳細を公開した。
2022年度冬季節電要請
2022年度冬季の九州エリアの電力需給は、10年に一度の厳しい寒さを想定した需要に対して、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しではあるものの、想定を超える電力需要の増加やウクライナ情勢の影響等により燃料供給が途絶えるリスクの継続など、引き続き予断を許さない状況であった。この状況を踏まえ、12月1日に「需給ひっ迫対策総本部」を設置した。