企業情報

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4.主な取組み(2021年~)

2021年以降の技術開発の中から、次の3つのカテゴリーにおける主な取組み概要について紹介する。

1 脱炭素社会の牽引

  • 電源の低・脱炭素化や電化推進に資する技術開発 など

2 エネルギーサービスの高度化

  • エネルギーの安定供給やコスト削減に資する技術開発 など

3 スマートで活力ある社会の共創

  • 地域の活性化に資する技術開発 など

脱炭素社会の牽引

電気バス向け大容量充放電器の開発

当社とグループ会社の九電テクノシステムズ株式会社、株式会社キューヘンは、電気バスなど商用・業務用電動車両を導入・運行する企業・自治体などの事業所向け大容量充放電器を共同開発した。この充放電器は、国内最大級となる50kWの放電出力、工場などにも使われる三相動力負荷にも供給可能、2台の電動車両に同時接続し交互に充放電が可能などの優れた特徴を有している。さらに、エネルギーマネジメントシステム(EMS)と組み合わせることにより、事業用施設の電力ピークカットや災害時の非常用電源として、また太陽光発電との組み合わせによる事業所のCO2削減など、電動車両の多目的活用により、電動車両の導入拡大・運用の経済性向上が期待できる。

自然冷媒ヒートポンプ給水予熱機の開発

2022年、当社と昭和鉄工株式会社は、食品工場などで使用されている蒸気ボイラーの燃料を削減する「自然冷媒ヒートポンプ給水予熱機」(商品名:プレキュート)を共同開発した。このシステムは、「蒸気ボイラーの給水を効率よく予熱(給水温度を予め上げておくこと)する」ことをコンセプトとしており、蒸気ボイラーの燃料を削減するとともに、CO2排出量の削減を図ることができる。また、給水を予熱することに機能を絞り、構成部品を極力削減したことでイニシャルコストの低減が可能となるほか、エコキュートと同じ自然冷媒(CO2)を使用した環境にやさしい製品となっている。蒸気ボイラーを多く利用している食品工場などに導入しやすく、広く普及することでCO2排出量削減に大きく貢献できる。

エネルギーサービスの高度化

導水路補強工事の合理化に関する研究

水力発電所の導水路設備補強工事を行う際、当社では、繊維強化プラスチック(FRP)格子筋とポリマーセメントモルタル(PCM)吹付による補強工法を採用している。しかし、既存のFRP格子筋は力学的に過剰な設計となっておりコストが高いことや、吹付施工時のPCM厚さ管理に手間がかかることが課題となっていた。これらの課題に対し、2種類の低コストFRP格子筋(ハイブリッドグリッド、フレキシブルグリッド)、及びPCM厚さの目安となる突起部を設けたレベラー付きアンカーを開発した。ハイブリッドグリッドは、強度設計の合理化を図り、一部の素材を安価なものに変更することでコスト低減を実現したものであり、フレキシブルグリッドは、様々な角度に変形できる部分を設けることで、隅角部における加工手間の省力化によりコスト低減を実現したものである。開発品を使用した試験施工、及び3か所の水力発電所での現場実装において良好な効果が確認できた。

AIによる導水路背面空洞検出システムの開発

水力発電所の導水路は高経年化が進展しており、導水路トンネルのアーチ部背面に空洞ができると、コンクリートに亀裂が発生し損壊に至る可能性があるため、電磁波レーダを使用した非破壊による空洞有無の調査を実施していた。しかし、従来の手法では、取得したレーダ画像から空洞有無を判定するには、熟練の専門技術者が必要となることや、データ量が膨大であり多大な時間を要すことが課題となっていた。そこで、蓄積されたデータや知見を基に、AI(機械学習)を用いて空洞有無の判定自動化システムを開発した。開発したシステムの判定性能の検証を実施したところ、良好な結果(正答率)が得られるとともに、作業量の低減効果も確認できた。この成果は、電力土木技術協会誌に投稿し、最優秀の評価も得られている。

スマートで活力ある社会の共創

植物工場に関する研究(イチゴ栽培実証)

総合研究所の強みである農業電化で培った技術を生かし、農業の省力化や生産性向上に繋がるスマート農業の普及を目指した研究に取り組んでいる。2019年からは、福岡県朝倉市に開設したイチゴ栽培実証施設「上寺(かみでら)いちご園」で、先端技術を活用した植物工場の実証研究を始めた。同園は、イチゴの苗を育てる育苗棟1棟と、実を育てる生産棟2棟からなり、2021年は10アール当たり5トンの収穫目標に対して、同5.1トンの収穫を達成している。イチゴは一年を通じて需要があり、供給量の少ない端境期では高単価の出荷が見込めるため、栽培品目として「かおり野」など5品種を育てながら、事業性等の評価を実施している。
実証研究では、植物の成長を左右する光、温度・湿度、二酸化炭素及び液肥などの要素をコントロールし、ハウス内の空調機器や遮光カーテンなどを自動で制御することで、最適な栽培環境を作り出す。農業は勘や経験といった「暗黙知」に頼る部分も多い中、蓄積した栽培スキル、ノウハウを検証しながら、「形式知」化することで、農業電化の普及とサービス提供に繋げていく。