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2.地球環境の保全及び地域環境との共生

低炭素社会の実現に向けた取組み

九州電力における温室効果ガスの排出抑制

京都議定書第一約束期間(20082012年度)まで

京都議定書第一約束期間(20082012年度)か年平均のCO2排出係数を、1990年度実績(0.436kg-CO2/kWh)に対して20%程度低減(0.348kg-CO2/kWh)することを自主目標として、CO2排出抑制に取り組んだ。CO2排出抑制目標の達成はもとより、低炭素社会の実現に貢献していくために、中長期的な観点で、電気の供給面と使用面の両面から、温室効果ガス排出抑制への取組みを進めた。

電気の供給面では、エネルギーセキュリティ面、地球温暖化対策面、経済性などで総合的に優れる原子力の安全・安定運転に努めるとともに、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの積極的な開発・導入や火力総合熱効率の維持・向上などに取り組んだ。
電気の使用面では、エコキュートなど高効率機器の普及促進やお客さまへの省エネ情報の提供、九州電力自らの省エネ(オフィス電力使用量の削減など)の一層の推進などに取り組んだ。
さらには、CO2排出抑制目標達成のための補完的措置として、世界銀行炭素基金(Prototype Carbon FundPCF)、日本温暖化ガス削減基金(Japan GHG Reduction FundJGRF)などのファンドへの出資や個別プロジェクトからのCO2排出クレジット購入など、国際的な温室効果ガス削減制度である京都メカニズムや、2008年から開始された国内クレジット制度の活用にも取り組んだ。

2008~2010年度の年間はこの目標水準を達成したが、東日本大震災の発生(2011年)以降、原子力発電所の運転停止の継続に伴い代替する火力発電量が大幅に増加し、20112012年度のCO2排出量が大幅に増加したため、か年平均の排出係数は0.429kg- CO2/kWhとなり1990年度比で1.6%の低減にとどまった。目標水準には到達できなかったが、非常に厳しい経営環境の下、大震災以降も電気の供給面と使用面の両面にわたりCO2排出抑制に取り組むとともに、年間で約1千万トンのCO2排出クレジットを調達するなど、原子力発電所の停止による影響を除けば、20%程度低減の水準にまで到達できるよう、CO2削減努力を継続した。

京都議定書第一約束期間以降(2013年度~)

2013年度以降は、順次、原子力発電所の運転再開を果たし、安定運転を継続していることに加え、再生可能エネルギーで発電された電力量が増加していること等により、CO2排出量は減少傾向で推移している。
京都議定書以降のCO2排出量削減に向けた国内外の動きとして特筆すべきは、2020年以降の温室効果ガス削減のための新たな国際枠組みである「パリ協定」の発効(201611月)である。

国は、201512月のパリ協定の採択に向け、2030年度のCO2排出量削減目標を2013年度比で26.0%減とする「日本の約束草案」を決定し、2016月、同内容を目標とする地球温暖化対策計画を策定した。

これに対し、当社は、「電気事業低炭素社会協議会(2016月設立)」の一員として、引き続き安全を大前提とした原子力発電の活用、再生可能エネルギーの活用、火力発電の更なる効率化と適切な維持・管理及び低炭素社会に資する省エネ・省CO2サービスの提供等により、需給両面から温室効果ガスの排出抑制に着実に取り組み、2030年における電気事業全体や日本の目標達成に貢献することとしている。
このように、低・脱炭素社会の実現を目指す動きが世界的に活発化しているなか、当社は2019月に策定した「九電グループ経営ビジョン2030」の中で、「2030年度までに九州のCO2削減必要量の70%削減(2013年度比)に貢献」することを経営目標のつに定め、「電化」と「電源の低炭素化」を進めるとともに気象災害リスクへ的確に対応していく等、持続可能な企業経営を行うこととした。また、気候変動に関する長期のリスク・機会と対策について、TCFD(注)提言の枠組みに沿った情報開示を充実させることでステークホルダーの皆さまへの説明責任を果たしていくこととした。

(注)TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)の略称。G20財務大臣・中央銀行総裁会合の要請を受け、金融安定理事会(FSB)によって設立されたタスクフォース。2017月、投資家の適切な投資判断のために、気候関連のリスクと機会がもたらす財務的影響について情報開示を促す提言を公表。当社は2019月、同提言の趣旨に賛同することを表明。

また、当社グループでは、パリ協定「脱炭素社会」実現に向け、2020月、一般社団法人日本経済団体連合会(以下、経団連)が主導する「チャレンジ・ゼロ(注)」への参加を表明した。チャレンジ事例として、現在取り組んでいる「大型車向け大容量充放電器の開発」「電動車で1次利用したリチウムイオン電池を大規模定置用蓄電池システムにリユースする仕組みの検証」「バイオマス混合新燃料の開発」を登録した。

(注)チャレンジ・ゼロ:経団連が打ち出した「脱炭素社会」の実現を目指す取組みで、参加企業・団体は、脱炭素社会に向けたイノベーションにチャレンジすることを宣言するとともに、具体的なアクションを表明するもの。

火力発電の高効率化(ベンチマーク指標)

「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」では、2030年度のエネルギーミックスの実現に向け、発電事業者に対して、発電設備を新たに設置する際の熱効率基準と既設の老朽施設の休廃止や運転頻度の低減による設備全体の発電効率向上が求められている。これを受け、九州電力では最新技術を採用した松浦発電所号機の開発、熱効率の低い石油火力発電所の稼働率低減や計画停止・廃止、高効率コンバインドサイクル発電方式を採用した新大分発電所3号系列第軸の運転開始、新大分発電所号系列(LNGコンバインドサイクル発電方式)のガスタービン更新など、火力総合熱効率の向上に取り組み、2030年の目標達成に向け適切に対応している。

CO2を排出しない電源構成(非化石電源比率)

「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」では、全事業年度の電気の供給量が5憶kWh以上の小売電気事業者に対して、2030年度の電気の供給における非化石電源比率を44%以上とすることが求められている。これを受け、九州電力では、安全を大前提とした原子力発電の活用再、生可能エネルギーの積極的な開発と受入れなどにより、販売電力に占める非化石電源比率の向上を図ることで、2030年度の目標達成に向け適切に対応している。

九州電力の事業所における省エネ・省資源活動

九州電力は、お客さまの省エネを積極的にサポートする事業者として、自らの事業所における省エネ・省資源活動に取り組んでいる。

東日本大震災以降の原子力発電所の運転再開延期等により、2011年から2015年の特に需給が厳しいと予想される時期においては、お客さまへ、生活・健康や生産・経済活動に支障がない範囲内で可能な限りの節電をお願いし、ご協力をいただいた。お客さまに節電をお願いするにあたっては、当社自らがより一層の省エネに取り組む必要があるとの強い認識のもと、当社事務所において、それまでよりさらに踏み込んだ節電に取り組んだ。また、社員は職場だけでなく、各家庭においても、エアコンの温度設定やこまめな消灯などの省エネに取り組んだ。

循環型社会形成への取組み

廃棄物のゼロエミッション活動

九州電力が排出する産業廃棄物には、火力発電所の運転に伴う副産物(石炭灰、石こう)や工事に伴う撤去資材等があり、一般廃棄物には、古紙や発電所で海水を使用する設備についた貝類、ダムの流木等がある。これらの廃棄物を適切に管理・処理するとともに、発生量の抑制(Reduce:リデュース)、再使用(Reuse:リユース)、再生利用(Recycle:リサイクル)の3Rを実践している。
2002年度から「環境経営」の視点から環境活動を強化した「廃棄物のゼロエミッション活動」を展開し、全社の産業廃棄物リサイクル率目標を2003年度に95%以上、2008年度には99%以上に見直し、積極的に循環型社会形成への取組みをおこなった。(2018年度からは、石炭灰リサイクル率:100%、石炭灰以外リサイクル率:98%としている。)
電気事業連合会は、経団連「循環型社会形成自主行動計画」に参画し、実施状況や進捗状況について毎年フォローアップをおこなっており、九州電力も同会の一員として目標達成に貢献している。

産業廃棄物の共同回収

全事業所において、2001年度から使用済み蛍光管を、2005年度から全社的かつ恒常的に発生している産業廃棄物(廃プラスチック類、金属くず、ガラス・陶磁器くず、木製パレット、廃乾電池)を、複数の事業所で一括回収のうえ全量リサイクルする「共同回収」に取り組んだ。

2018年度からは、コンクリートくずを対象品目に追加し、効率的な回収による輸送面での更なる環境負荷低減にも努めている。

地域環境の保全

設備形成における環境への配慮

電力設備形成時において、設備や地域の特性に応じた適正な環境アセスメントの実施等により、環境配慮を図るとともに、周辺環境との調和に努めている。

環境アセスメント(環境影響評価)の実施

2011年度以降においては、塚原水力発電所総合更新計画や大岳地熱発電所更新計画に係る法に基づく環境影響評価手続きを実施した(塚原:201312月終了、大岳:2016月終了)。
大岳地熱発電所更新計画では自然環境等調査の結果、ヒゴダイなどの希少な植物が確認されたため、専門家に相談のうえ移植を行うなど、環境保全のための適切な措置を講じた。
また、環境影響評価法及び自治体の環境影響評価条例の対象規模に該当しない内燃力発電所の増設・更新計画や水力発電所再開発計画等について、環境保全を目的として自主的な環境アセスメントをおこなった(内燃力発電所:新知名7号機増設:2017月終了、新喜界7・8号機増設、新与論号機増設、悪石島号機更新:2018月終了など、水力発電所:新名音川:2013月終了、新竹田:2019月終了など)。

化学物質の管理

PCB(ポリ塩化ビフェニル)の適正処理

当社が保有するPCBが含まれる電気機器等については、高濃度(注1)、低濃度(注2)PCB廃棄物ともに法定期限内の無害化処理完了に向け計画的に処理を進めている。

(注1):PCB濃度:5,000mg/kg超過
(注2):PCB濃度:0.5mg/kg超過~5,000mg/kg以下

社会との協調

生物多様性の保全

2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、生物多様性に関する世界目標となる愛知目標が採択された。我が国では、2012月に「生物多様性国家戦略20122020」を閣議決定し、我が国の長期(2050年)・短期(2020年)の目標や、愛知目標の達成に向けたロードマップに加え、2020年までに重点的に取り組むべき施策の方向性を示した「つの基本戦略」を定めた。当社は、この「生物多様性国家戦略2012-2020」の趣旨を尊重しつつ、事業活動や社員の暮らしが自然環境や生物多様性の恵みに支えられていることを十分認識した上で、「電気事業における生物多様性行動指針(注)」のもと、生物多様性の保全と持続可能な利用への取組みを継続していくこととしている。

(注)電気事業連合会が2010月に策定・公表。今般のSDGsの様々なゴールの達成や、低炭素・脱炭素化、資源循環、生物多様性保全といった、幅広い環境活動を取り込む「事業活動と環境対策の統合」いわゆる「環境統合型経営」が求められるようになったことを踏まえ、2020月に改定。

非化石証書の販売収入の活用

九州電力は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入拡大や原子力発電の安全・安定運転等を進めており、これらの非化石電源(再エネ、原子力発電等)の発電により生じる非化石証書については、他小売電気事業者のエネルギー供給構造高度化法の目標達成を後押しするため、積極的に販売し収入を得ている。その収入は、再エネ(地熱・水力等の非FIT電源)の開発・リプレース等の設備改修工事、原子力発電所の安全対策工事等、非化石電源の維持・拡大のための投資に全て活用している。

「サーキュラーパーク九州」の実現に向けた検討

2022年7月26日、循環経済(サーキュラーエコノミー)と脱炭素化の推進による持続可能な社会の構築に向け、旧川内発電所跡地を資源循環の拠点「サーキュラーパーク九州(略称:CPQ)」として位置づけ、その基本構想を公表。
同日、薩摩川内市、早稲田大学、鹿児島銀行、ナカダイホールディングス及び九州電力の5者にて、CPQの実現にむけた協定書を締結。産官学連携により、具体的な検討を推進。