1.調達機能強化の取組み
戦略購買への取組みの背景
電力自由化を背景に、全社的な経営効率化の取組みを進めるなか、資材調達部門では、より一層の調達コスト低減に努めることにより、九州電力の競争力強化に貢献していく必要がある一方で、安定調達・品質確保・環境負荷低減など、コスト低減とトレードオフの関係が内在する課題にも取り組む必要があった。そのため、競争見積や価格交渉を中心とする従来の調達プロセスだけでは限界があり、新たな調達プロセス(=戦略購買プロセス)の構築が必要となった。
購買原価企画活動の推進
「購買原価企画活動」とは、九州電力が調達する資機材や工事などの役務について、取引先と協働で、コスト発生のメカニズムに着目して原価構造を分析し、コスト低減に関する課題や着眼点を抽出して改善案を立案・実施し、調達コストの削減を図るものである。2002年7月から、配電用資機材を中心として開始し、原材料変更や仕様合理化などの改善策を実施し、コスト低減を図っている。
サプライチェーンマネジメント(SCM)の開始
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、材料加工→部品製造→製造→施工(取付)といった一連の調達プロセスの全体最適化を図り、過剰設備や滞留在庫などといったロスの要因となる工程を特定し、改善策を立案、実施し、材料費や製造コストなどの資機材調達にかかる総コストの低減を図るものである。2005年1月から活動を開始し、取引先との早期情報共有化や長期契約の締結などによる安定調達やコストの低減などを図った。
三者協働体制の構築
「原価低減に向けた資機材の調達コスト低減と地域共生などの両立」というテーマ実現のためには、主管部門・資材調達部門で各々展開しているコスト低減活動では限界があり、「主管部門・資材調達部門・取引先による三者協働体制の構築」を全社レベルで部門横断的に取り組むことが有効であることから、2005年8月から検討・協議を実施して、「三者協働を推進するためのしくみ」を制定し、2008年度から運用を開始した。
以上のような戦略的な購買プロセスを関係箇所と協働して実施した結果、コスト削減効果を創出したほか、リサイクルの促進による環境負荷低減と取引先の技術力継承や製造体制の維持などによって安定調達を図った。
更なる調達機能の強化
当社は、東日本大震災以降、原子力発電所が全基停止し、電気料金の値上げを申請するなど、極めて厳しい経営環境に置かれていた。こうした状況に対応するため、経営全般にわたる徹底した効率化に全社を挙げて取り組むこととなり、その一環として、資材調達部門においても、調達コスト低減策を検討する部門横断の社内体制(資材調達分科会)を構築し、競争原理の活用拡大などに取り組んでいた。
こうした中、外部の視点を取り入れ、調達コスト低減の実効性を更に高めていくことを目的として、グローバル市場において高い競争力を発揮している国内メーカー出身者などの社外専門家も委員とした「調達改革推進委員会」を2014年に設置した。
同委員会からの提言を踏まえ、調達機能強化のコンセプト※1として、資材調達部門が目指すべき姿を2016年にまとめ、本コンセプトに基づき、調達コスト低減や安定調達の確保に向けた調達機能強化の取組みを開始した。
その柱となる施策として、2017年より本店資材調達部門に原価低減活動の専任者(カテゴリーリーダー)を配置。カテゴリーリーダーを中心に、調達対象毎の課題や、対応の方向性をとりまとめた「資材調達方針」を毎年策定し、同方針に基づき、生産現場や工事の施工現場を訪問のうえ、サプライヤーや主管部門とのコミュニケーションを深め、課題や悩みを共有しながら、現地・現物での原価低減活動を推進している。
2019年度からは、新たなフェーズとして、カテゴリーリーダーの資材調達方針に基づく活動の充実・拡大に加え、グループ大の競争力強化へ貢献していくため、グループ各社と連携した共同VE活動※2や共同調達等の調達コスト低減への取組みを拡大することとしている。
※1 基本コンセプト:
コスト形成の上流段階からの参画、競争と協調を組み込んだサプライヤー関係の構築により、品質・コスト・デリバリーの確保と改善に向けて調達活動を展開し、グループ大の競争力強化に貢献する
※2 VE活動
製品やサービスの価値を機能とコストで把握し、システム化された手順で価値の向上を図る活動
※3 コストテーブル
対象品目の原価を構成する要素や変動要因を可視化し、コスト改善や価格交渉のベースとするもの
※4 フィールドスタディ
現場調査を実施し、コストの可視化や改善項目の抽出を通じてコスト低減につなげる活動